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決闘(坂口安吾)のあらすじ・登場人物

死に損なった特攻隊員たち

  • 青春
  • 心理

坂口安吾 1947年(昭和22年)11月 「社会」

文字数
15,230字
読了目安
約30分
表記
新字旧仮名
種別
小説

この作品について

1947年(昭和22年)、雑誌「社会」に発表された坂口安吾の短編。特攻基地に配属された妙信、京二郎、安川らの若い隊員たちが、死を覚悟した夜の騒ぎのなかで、基地の町の娘たちと関係を持つ。終戦で命が助かったのち、「死ぬ運命が変わって起こった揉めごと」として、一人の娘をめぐる決闘のような争いが始まる。戦争で変わった若者たちの感傷と、女性のしたたかさを、安吾らしい皮肉と痛みで描く。

あらすじ

妙信、京二郎、安川らは四月の初めに特攻基地へ廻された。基地は夜ごと気違い騒ぎで、規律はなく、死を前にした男たちは酔い、踊り、町の女たちのもとへ通っていた。妙信は浅草の寺の子で、清元と常磐津に親しみ、この生活にすぐなじんだ。絵描き志望の安川は、町の娘トキ子と親しくなり、別れ際に「私、イケニヘぢやないわ。あなたを愛してゐました」と告げられて動揺する。無口な京二郎は、死の命令に絶望と怒りの波を繰り返していた。ところが出撃の前に終戦を知らされ、三人は命を拾う。安川はトキ子の言葉を確かめようと駆けだし、妙信と京二郎も後を追う。トキ子の家には、同じ隊の村山中尉もすでに求婚者として居合わせた。安川と村山は、トキ子の母を交えて正式の手順で争うことにして、向かい合う家に分かれて住みながら互いを見張りあう。京二郎は、そんな二人の外で、トキ子と二人きりの時間をもつ。結末、母娘は男たちの荷物を運び出させ、「あんまり威張らないで」と言いわたす。翌朝、トキ子の一家は早くから温泉へ姿を消し、残された手紙には「おかげさまで強くなりました」とだけ書かれていた。京二郎は、女のほうが先に進軍していたと思い知らされる。

登場人物

冒頭部(原文より)

妙信、京二郎、安川らの一行が特攻基地へ廻されたのは四月の始めであつたが、基地はきゝしにまさる気違ひ騒ぎで、夜毎々々の兵舎、集会所、唄ふ奴、踊る奴、泣く奴、怒る奴、血相変り、殺気だつた馬鹿騒ぎである。真剣をぬいて剣舞のあげくに椅子を真ッ二ツに斬りこむ男、ビールビンをガラス窓に叩きつける男、さうして帰らぬ征途につく。規律などは滅茶々々、酔つたあげく兵舎の窓をとびだして妓楼へ行く奴、町へくりだし情婦の家へくづれこむのは良い方で、女を押へつけて無理無体に思ひをとげる奴、上官は見て見ぬフリ、士気があがつてゐるからアバレル、血気がなくては敵の軍艦に突ッこめない、まるでもう当り前の顔でかう言つてゐる。

「決闘」坂口安吾(青空文庫)

末尾部(原文より)

肉体だけで進軍してゐる。男の奴が感傷や屁理窟で手まどるうちに、女は時間を飛躍して行く。  女を軽蔑してハジをかいたから、こんどは女を尊敬してやらう。女の方がハジをかくぐらゐ尊敬してやらう。然し女はハジをかくだらうか、などゝクサ/″\のことを考へて、ともかくトキ子は可愛いかつた。ふと、そんな風に考へらると、どうやら胸がチクリと痛むやうな珍妙なぐあいになつてゐた。

「決闘」坂口安吾(青空文庫)

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