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乞食学生(太宰治)のあらすじ・登場人物

川で泳ぐ少年と過ごす一日

  • 心理
  • 青春

太宰治 1940年(昭和15年)7月 「若草」

文字数
33,682字
読了目安
約1時間7分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

三十二歳の小説家が味わう一夜の白日夢を描いた中編。1940年(昭和15年)7月から12月まで、雑誌「若草」に連載された。玉川上水で泳ぐ全裸の少年に出会うところから話は転がり、井の頭の茶店、渋谷の下宿、酒場へと、生意気な少年たちとの珍妙な交遊が続く。「大貧に、大正義、望むべからず」というヴィヨンの一句を掲げ、失われた青春への渇きをユーモラスに、そしてほろ苦く描いている。

あらすじ

醜作を投函した自己嫌悪から、私は玉川上水のほとりをさまよっていた。人喰い川と呼ばれるその流れを、真白い全裸の少年が笑いながら押し流されている。助けようとした私を、少年は「頭が悪い」と罵り、ガロアだのバイロンだのを持ち出して生意気な議論をふっかけてきた。腹を立てた私は、井の頭公園の茶店へ連れて行って恥をかかせてやろうと企むが、財布には五十銭紙幣が一枚きり。佐伯五一郎と名乗るその少年は、良家の家庭教師をしくじり、制服も靴も売り払ってしまったのだという。私は一肌脱ごうと、友人の学生・熊本君の下宿で制服と制帽を借り、少年を連れて渋谷の街へ繰り出す。裏切りも、ナイフの騒ぎもあった末に、三人は杯を挙げた。

登場人物

冒頭部(原文より)

一つの作品を、ひどく恥ずかしく思いながらも、この世の中に生きてゆく義務として、雑誌社に送ってしまった後の、作家の苦悶に就いては、聡明な諸君にも、あまり、おわかりになっていない筈である。  私はその日も、私の見事な一篇の醜作を、駅の前のポストに投函し、急に生きている事がいやになり、懐手して首をうなだれ、足もとの石ころを蹴ころがし蹴ころがしして歩いた。

「乞食学生」太宰治(青空文庫)

末尾部(原文より)

夢だったのに違いない。公園の森を通り抜け、動物園の前を過ぎ、池をめぐって馴染の茶店にはいった。老婆が出て来て、 「おや、きょうは、お一人? おめずらしい。」 「カルピスを、おくれ。」おおいに若々しいものを飲んでみたかった。  茶店の床几にあぐらをかいて、ゆっくりカルピスを啜ってみても、私は、やはり三十二歳の下手な小説家に過ぎなかった。少しも、若い情熱が湧いて来ない。その実を犇と護らなん、その歌の一句を、私は深刻な苦笑でもって、再び三度、反芻しているばかりであった。

「乞食学生」太宰治(青空文庫)

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