老ハイデルベルヒ(太宰治)のあらすじ・登場人物
三島で過ごした青春の夏
- 青春
- 心理
- 文字数
- 8,879字
- 読了目安
- 約18分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 静岡県
この作品について
1940年(昭和15年)3月、雑誌「婦人画報」に発表された短編。題はドイツの学生劇『アルト・ハイデルベルク』(懐かしい青春の地)にちなむ。八年前、怠惰な帝大生だった「私」が、友人を連れて静岡の三島に滞在した一夏を、酒屋の青年・佐吉やその妹との交わりとともに回想し、八年後に再び訪れた町の荒涼とした姿と対比させる。寂れた宿場町の描写と、過ぎ去った時間へのほろ苦い感傷が味わいどころ。
あらすじ
八年前、怠惰な帝大生だった「私」は、姉から送られた五十円を懐に、おでんやで会った友人三人を勢いで誘い、三島へ向かう。酒屋を営む青年・佐吉が駅に迎えに来ているか不安で震えたが、佐吉はバスで現れ、古奈温泉で友人たちをもてなして東京へ帰した。一夏を佐吉の家で過ごし、小説『ロマネスク』を書く。三島は水の澄んだ寂れた宿場町で、祭りの日、佐吉や江島とともに祭りに反発して酒を飲み、夜には、佐吉が肥った母を背負って屋根に登り、二尺玉の花火を見せようとする。その姿を見て、私は満足して眠った。八年後、困窮した作家となった私は、妻や母、妹を連れて三島に立ち寄るが、町は荒涼とした他人の町になっていた。昔の飲み屋で気負って注文する私を、母が「無駄なことは、およしなさい」とたしなめ、私はこの世で一ばんしょげてしまう。
登場人物
- 私 怠惰な帝大生。八年後は貧しい作家となって三島を再訪する
- 佐吉 三島で酒屋を営む二つ年下の青年。人柄がよく仲間に慕われる
- さいちゃん 佐吉の妹。二十歳で、年齢のわりに大人びたしっかり者
- 江島 金持ちの家に育ち、世を怒ってばかりいる青年
冒頭部(原文より)
八年まえの事でありました。当時、私は極めて懶惰な帝国大学生でありました。一夏を、東海道三島の宿で過したことがあります。五十円を故郷の姉から、これが最後だと言って、やっと送って戴き、私は学生鞄に着更の浴衣やらシャツやらを詰め込み、それを持ってふらと、下宿を立ち出で、そのまま汽車に乗りこめばよかったものを、方角を間違え、馴染みのおでんやにとびこみました。
「老ハイデルベルヒ」太宰治(青空文庫)
末尾部(原文より)
「うなぎと、それから海老のおにがら焼と茶碗蒸し、四つずつ、此所で出来なければ、外へ電話を掛けてとって下さい。それから、お酒。」 母はわきで聞いてはらはらして、「いらないよ、そんなに沢山。無駄なことは、およしなさい。」と私のやり切れなかった心も知らず、まじめに言うので、私はいよいよやりきれなく、この世で一ばんしょげてしまいました。
「老ハイデルベルヒ」太宰治(青空文庫)
原文を読む
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