現代忍術伝(坂口安吾)のあらすじ・登場人物
講談調の戦後ドタバタ劇
- 風刺
- 冒険
- 文字数
- 76,446字
- 読了目安
- 約2時間33分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 東京都
- 神奈川県
この作品について
1949年(昭和24年)8月から翌年3月にかけて「講談倶楽部」に連載された、坂口安吾の長編ユーモア小説。終戦後の混乱期、失業した元・歴史教師の正宗菊松が、商事会社と新興宗教が入り乱れる騒動に巻きこまれる。「その一」から「その十八」まで、章題は講談調で、悪人も善人もドタバタの中で正体を現してゆく。
あらすじ
終戦の翌年まで中学校の歴史の先生だった正宗菊松は、五十を過ぎて食べられなくなり、天草商事という新興会社の重役におさまる。実は、編輯長の白河半平に担がれたニセモノ重役である。半平や雲隠才蔵たちとともに、社長が心酔するマニ教の教団へ献上品を運びこむが、菊松は魂を抜かれたように信徒の列に加えられ、神前で取り調べを受ける。やがて天草商事は箱根の山林取引に乗りだし、そこへ怪社長サルトルが現れる。才蔵とサルトルは手を組んだり反目したりし、美女のツル子はスパイとしてサルトルに近づくうち恋の虜となって、彼を悪の道から救おうと計略をめぐらせる。菊松は教団で神様と祀り上げられるなど翻弄される。サルトルは改心し、計略は大成功となる。才蔵は雲隠れし、天草商事は立ちゆかなくなり、新たに「巷談社」が創立される。静養を終えた菊松は専務として出社し、天草商事の元・編輯長の半平が同じ社にいるのを見て、握手を交わす。
登場人物
- 正宗菊松 元・中学校の歴史の先生。就職先の騒動に巻きこまれる
- 白河半平 天草商事の編輯長。「知らぬ顔の半兵衛」を自認する
- 雲隠才蔵 悪事をたくらむチンピラ
- サルトル 怪社長。のちにツル子の説得で改心する
- ツル子 スパイとしてサルトルに近づく美女。のちに彼の妻となる
冒頭部(原文より)
戦乱破壊のあとゝいうものは、若い者の天下なのである。昔から変りがない。野武士といえば柄がよくきこえるが、手ッとり早く云えば、当今の集団強盗、やがて一家をなしてボスとなる。これが昔なら大名だ。集団強盗の手先をつとめる浮浪児の一人が、顔は猿に似ているが、智恵がある。しかるべく立身出世して天下をとったのが豊臣秀吉という先輩なのである。同じような浮浪児の一人が、小坊主に仕立てられたが、寺を逃げだして、油の行商をやって小金をもうけ、大名にとりいって武士となったが、主人を殺して城と国を盗んでしまった。
「現代忍術伝」坂口安吾(青空文庫)
末尾部(原文より)
菊松も、こだわらず、半平の手を握りかえした。スガスガしい愛情だ。彼も亦、恨みは忘れていた。ただ、新しい人生、そしてわが社、わが社員を愛する思いでイッパイだった。 この風景を眺め、仕事の手を休め、ニコヤカにモミ手して、慶祝の意を表して悦に入っているのがサルトル社長だ。それを見て、口を抑えて、ふきだすのをこらえているのが、愛妻重役であった。まずはメデタシ。
「現代忍術伝」坂口安吾(青空文庫)
原文を読む
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