女性独白体とは
- 分類
- 文体・技法
- 読み
- じょせいどくはくたい
太宰治が、女性の一人称の語り(独白)によって書いた一群の小説を指す呼称。語り手の女性が読者や身近な人に打ち明けるように、とりとめなく移ろう感情や羞恥、自意識を、話し言葉のリズムでこまやかに語っていく点に特色がある。昭和12年(1937年)10月に雑誌「若草」へ発表した「燈籠」が最初期の作とされ、下駄屋の娘さき子が恋する学生のために万引きをして捕らえられる顛末を、本人の告白として語った。続く「女生徒」(昭和14年「文學界」)は、ある読者の女性から送られた日記を素材に、少女の一日の心の揺れを描いて川端康成に称賛され、同作を表題とする作品集は北村透谷記念文学賞の次席となった。以後、妹の秘密を姉が回想する「葉桜と魔笛」、肌の吹出物に揺れる妻の心を語る「皮膚と心」(ともに昭和14年)、俗物となってゆく画家の夫に別れを告げる「きりぎりす」(昭和15年)、早すぎた名声に翻弄された少女の「千代女」(昭和16年)など、戦前から戦中にかけて数多くの佳品が書かれた。この語りは戦後も「ヴィヨンの妻」(昭和22年)や、没落貴族の娘かず子の語りを軸とする長編『斜陽』(同年)へと引き継がれ、太宰文学の大きな柱の一つとなっている。