千代女(太宰治)のあらすじ・登場人物
神童と呼ばれた少女の告白
- 心理
- 文字数
- 11,997字
- 読了目安
- 約24分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
この作品について
太宰治が1941年(昭和16年)6月、『改造』に発表した短編。幼いころ綴り方の才能をほめられ、新聞に取り上げられて神童と呼ばれた少女・和子が、その後の歩みを自分の口で語る「女性独白体」の一編。早すぎた名声と、それをもてはやした大人たちへのまなざし、書くことへの思いを、自嘲まじりの告白に込める。題名は江戸時代の俳人・加賀千代女にちなむ。
あらすじ
「女は、やっぱり、駄目なものなのね」——もうすぐ十九になる和子は、自分の頭の悪さを嘆きながら語りはじめる。幼いころ、和子は綴り方に非凡な才を見せ、その作文が新聞に載り、有名な作家・岩見先生からも励ましの言葉をもらって、神童と評判になった。周囲の大人たちは競って和子をほめそやし、更なる傑作を期待する。だが、ちやほやされ、人の目を意識するようになった和子は、いつしか何を書いてもわざとらしく思え、かえって一行も書けなくなってしまう。期待は重荷となり、才能は枯れ、和子はやがて、取り柄のない平凡な娘へと変わっていく。早すぎた栄誉に人生を狂わされた和子の姿を通して、太宰は才能をもてあそぶ大人たちの罪と、自意識の陥穽を静かに描き出す。
登場人物
- 和子 かつて神童ともてはやされた少女。もうすぐ十九歳。語り手
- 岩見先生 和子の綴り方を励ました有名な作家
- 叔父・両親 和子をほめそやし、才能に期待した大人たち
冒頭部(原文より)
女は、やっぱり、駄目なものなのね。女のうちでも、私という女ひとりが、だめなのかも知れませんけれども、つくづく私は、自分を駄目だと思います。そう言いながらも、また、心の隅で、それでもどこか一ついいところがあるのだと、自分をたのみにしている頑固なものが、根づよく黒く、わだかまって居るような気がして、いよいよ自分が、わからなくなります。
「千代女」太宰治(青空文庫)
末尾部(原文より)
お母さん、私は千代女ではありません。なんにも書けない低能の文学少女、炬燵にはいって雑誌を読んでいたら眠くなって来たので、炬燵は人間の眠り箱だと思った、という小説を一つ書いてお見せしたら、叔父さんは中途で投げ出してしまいました。きのう私は、岩見先生に、こっそり手紙を出しました。七年前の天才少女をお見捨てなく、と書きました。私は、いまに気が狂うのかも知れません。
「千代女」太宰治(青空文庫)
原文を読む
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