個人主義とは
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- 読み
- こじんしゅぎ
国家や家、共同体よりも個人の価値と自由を重んじ、一人ひとりの人格と自主性を尊重しようとする考え方。英語のindividualismの訳語で、明治期には自分の利益だけを求める利己主義と混同されることも多かった。明治30年代には、高山樗牛が本能の満足を説く「美的生活を論ず」(明治34年)で個人の解放を唱えて論争を呼んだ。日露戦争後には、青年たちの関心が国家から自己の内面へ向かい、自然主義の告白や白樺派の個性の尊重に、個人を重んじる考え方が表れた。その意味を明快に語ったのが夏目漱石の講演『私の個人主義』(大正3年)である。漱石はロンドン留学中の苦悩から「自己本位」の立場をつかんだ経緯を語り、自己の個性を発展させたいなら他人の個性も尊重しなければならない、権力や金力を用いるならそれに伴う義務と責任を自覚しなければならないと説いて、個人主義を利己主義から区別した。漱石は小説でも、『それから』や『こころ』などで、近代の個人が抱える孤独とエゴイズムを描いている。石川啄木の『時代閉塞の現状』のように、強権の前で青年の自由が行き場を失っている状況を問う評論もあった。大正期の教養主義も、個人の人格の形成を重んじる点でこの流れを受け継いでいる。