誰も知らぬ(太宰治)のあらすじ・登場人物
誰も知らぬ春の夜の走り
- 恋愛
- 心理
- 文字数
- 7,123字
- 読了目安
- 約14分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 東京都
この作品について
1940年(昭和15年)4月、雑誌「若草」に発表された短編。四十一歳の安井夫人が聞き手に向かい、二十三歳の春にあった「可笑しなこと」を語る、女性一人称の語り物。女学校時代の友人とその家の菓子屋の兄をめぐる、誰にも知られていない一夜の出来事が、淡い恋心とともに描かれる。
あらすじ
四十一歳の安井夫人が語る。二十年前の春、牛込の家に住む二十三歳の娘だった頃、女学校の同級生で、向かいの菓子屋の娘・芹川さんと小説の話を通じて親しくしていた。芹川さんは、雑誌の投書欄で知り合った慶応の学生と結婚したがっていたが、兄は反対していた。大震災の少し前の夜、芹川さんの兄が勝手口に来て、妹が家出したので捜しに行くと言う。その瞬間、夫人は自分がその兄に心を寄せていたことに気づき、夜道を市ヶ谷見附まで走って追うが、見つからず、何事もなく家に戻る。芹川さんは後に三田の人と結婚して朝鮮で暮らし、夫人も翌年嫁いだ。兄は今は菓子屋の当主で、週に一度、注文の菓子を届けに来る。夫人は「夢でも見たのでしょうか」と言い、娘が女学校三年になるのだから秘密にしてほしいと頼む。
登場人物
- 安井夫人 四十一歳。二十三歳の春の秘密を語る
- 芹川さん 向かいの菓子屋・華月堂の娘。小説好きの女学校の友達
- 芹川さんの兄 菓子屋の働き者の息子。夫人が密かに心を寄せる
冒頭部(原文より)
誰も知ってはいないのですが、――と四十一歳の安井夫人は少し笑って物語る。――可笑しなことがございました。私が二十三歳の春のことでありますから、もう、かれこれ二十年も昔の話でございます。大震災のちょっと前のことでございました。
「誰も知らぬ」太宰治(青空文庫)
末尾部(原文より)
私は、あの夜、縫いものをしながら、うとうと眠って夢を見たのでございましょうか。夢にしては、いやにはっきりしているようでございます。あなたには、おわかりでしょうか。まるで嘘みたいなお話でございます。でも、之は秘密にして置いていただきましょう。娘があなた、もう女学校三年になるのでございますもの。
「誰も知らぬ」太宰治(青空文庫)
原文を読む
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