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撞球室の七人(橋本五郎)のあらすじ・登場人物

消えた兇器はどこへ

  • ミステリ

橋本五郎 1931年(昭和6年)6月 「探偵」

文字数
5,590字
読了目安
約11分
表記
新字新仮名
種別
小説

この作品について

撞球場の二つの台のあいだで、眉間に大きな黒子のある男が心臓をひと突きにされて死んでいた——橋本五郎が雑誌「探偵」に発表した短編。窓も扉も閉ざされ、居合わせた七人の男は誰一人その部屋を出ていない。それなのに、細身の短刀とおぼしい兇器はどこからも発見されなかった。真相に思い当たった「私」が、それでも口をつぐんだ理由を静かに語る一編。

あらすじ

宵の口の撞球場。二つの台で賑やかに球が撞かれていたそのさなか、眉間に大きな黒子のある男が、台と台のあいだで殺されていた。もじりの上から只一突き、心臓のあたりからこんこんと血が吹き出している。……交番から警官が駆けつけ、管轄署の一行が来て、正式な取り調べがはじまった。被害者は福原某、三十六七歳、決まった商売はないらしい常連の一人。他殺は明らかだが、室内をくまなく調べ、七人の男を厳重に検査しても、ついに兇器は発見できなかった。窓は閉め、入口は磨硝子の扉が閉ざされ、床に裂け目もなく、帳場の押入れまで調べられている。七人のうち誰一人、その間に部屋を出た者はいない。——係官が目をつけたのは、チョークを拾うために被害者のすぐそばに跼んだ、色の黒い新しい撞手だった。この間まで曲馬団で印度人に化けて投剣をやっていた男だという。傷の深さと方向からして、兇器は手に持って突き込まれたのではなく、投げられたのだ。「兇器はいったい何処にかくした?」。だが男は落ち着きを取り戻して否認する。兇器が出てこないかぎり、係官も今一歩を踏み出せない。……翌日、話好きな友をつれて撞球場への路を歩きながら、「私」はいう。あの場合、たったひとり、室外に出た者があるんだよ、と。

登場人物

冒頭部(原文より)

 ……別の一台の方では、四人の人間が大声に笑いながら、賑かに三人上りの球を撞いていた。私の方は三人。前回に惜しい負をした私は休んで、もう五回から撞き続けている憎々しい眉間に大きな黒子のあるもじりの男と、それから新しい相手の、どこか南洋へでも行っていたらしい色のくろい男との勝負を見守っていた。そして、新しい相手がどうかしたはずみにチョークを取り落して、それを拾うために身を跼めた。

「撞球室の七人」橋本五郎(青空文庫)

末尾部(原文より)

 友は私を追いかけて来た。そして諸君よ、ああ友は小さくもない声で云ったではないか。 「君、君、そのまま放っては置いたけれど、あの草の中に短刀があったぜ。血の付いてるところまでは見なかったが、新しい奴だ。柄を上にして、そう草の中へつき刺したものらしい。もう一度行って見るか?」 「違う違う、君の見違いだ。なんかブリキの切れだろう」  私はそう云って振り向きもしなかったことである。

「撞球室の七人」橋本五郎(青空文庫)

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