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殺人迷路(連作探偵小説第六回)(橋本五郎)のあらすじ・登場人物

見えざる敵に操られて

  • ミステリ

橋本五郎 1932年(昭和7年)11月 「探偵クラブ」

文字数
3,447字
読了目安
約7分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

森下雨村・大下宇陀児・横溝正史・江戸川乱歩・夢野久作ら十人がリレー形式で書き継いだ連作探偵小説「殺人迷路」の、橋本五郎が担当した第六回——雑誌「探偵クラブ」に掲載された一編である。女優・宮部京子殺しの犯人に仕立てられていく探偵作家の星田代二が、見えざる敵の正体を探ってカフェーへ向かう。長い迷路の途中の一区間であり、単独では完結しない点に注意。

あらすじ

新橋駅で雑誌記者の津村と別れた探偵作家の星田代二は、じりじりと胸元へこみ上げてくる不安に耐えかねていた。つい先程まで冗談だとばかり思っていた事が、急に恐ろしい現実となって襲いかかってきたのだ。しかも自分は、この忌まわしい事件でまんまと犯人の役割を背負込まされている。指紋、足跡、眼鏡、そして被害者・宮部京子との過去の関係。第三者に操られていたという確かな証拠は、どこにもない。……このまま敵の攻撃を待っているべき時ではない。星田はあのカフェーへ車を乗りつけ、先夜の女給に、向うの卓子にいた眼の鋭い男と洋装の美人のことを尋ねた。すると女給は答える。あの人たちは二人連れではなく三人連れだった、棕梠の蔭にもう一人いた、その方は三映キネマのスタア、宮部京子だ、と。今しがた鎌倉でその死体を見てきたばかりの星田は、椅子から飛び上りそうになった。しかも、あの挑戦状は京子自身がこのカフェーから速達で出したものだという。「あの女がわざと手蹟を変えたのよ」と京子は笑っていたと。——それでは、「完全なる犯罪」を実証するために京子は自殺したというのか。いや、誰かが自分と京子を操り、京子を被害者に、自分を加害者に選んだのだ。あの鋭い眼の男こそ人形師に違いない。星田はそう思い定めて家へ帰る。だがその部屋には、正岡警部と二人の刑事が待ちかまえていた。

登場人物

冒頭部(原文より)

   見えざる敵  新橋駅で雑誌記者の津村と別れた探偵作家の星田は、そこから自動車を拾って一先ず自分の宅へ引上げてきた。  捕捉することの出来ない不安は、次第にじりじりと胸元へこみ上げてくる。つい、先程まで冗談だとばかり思っていた事が、急に恐ろしい現実となって襲いかかってきたのだ。しかも、この忌まわしい、好もしからざる事件に於て、自分はまんまと犯人の役割を背負込まされているのだ。

「殺人迷路(連作探偵小説第六回)」橋本五郎(青空文庫)

末尾部(原文より)

 部屋の中には、正岡警部がいた。そして警部の背後には、明かに刑事と思われる二人の人物がいかめしい顔をして突っ立っているのを見たのである。 「星田君! 気の毒だが警視庁まで来て貰おう」  警部は重々しい口調でそういった。 「ナ、何んのためです!」  星田代二は辛うじて扉の側で身を支えた。 「何のため? それは今更説明する迄もあるまい。宮部京子殺の嫌疑者として――」

「殺人迷路(連作探偵小説第六回)」橋本五郎(青空文庫)

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