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マリー・ロジェエの怪事件(ポー)のあらすじ・登場人物

新聞記事だけで挑む謎

  • ミステリ
  • 翻訳

ポー 訳者 佐々木直次郎 1932年(昭和7年)5月

文字数
52,481字
読了目安
約1時間45分
表記
新字新仮名
種別
小説

この作品について

ポーが1842年11月から翌年2月にかけて、雑誌『スノーデンズ・レディズ・コンパニオン』に3回に分けて発表した「The Mystery of Marie Rogêt」を、佐々木直次郎が訳したもの(第一書房『エドガア・アラン・ポオ小説全集』第3巻、1932年)。「モルグ街の殺人事件」に続き、オーギュスト・デュパンが登場する二作目にあたる。前年にニューヨークで起きて未解決だったメアリ・セシリア・ロジャーズ殺害事件の経過を、舞台をパリに移してほぼそのままたどり、香水店の評判の売り子マリーの死をめぐって各紙が掲げた説を、デュパンが一つずつ吟味していく。現場に出向かず、新聞記事と証言の記録だけを材料に推理を組み立てる構成で、安楽椅子探偵ものの早い例とされる。

あらすじ

モルグ街の事件を解決してから、オーギュスト・デュパンの名はパリ警察のあいだに知れ渡っていた。その二年ほどのち、香水店の売り子として評判だった美しい娘マリー・ロジェエが、ある日曜日の朝、叔母の家へ行くと言って母の家を出たまま行方を絶ち、四日後にセーヌ河で死体となって見つかる。マリーは以前にも一週間ほど姿を消して騒ぎになったことがあった。犯人の手がかりはつかめず、懸賞金は三万フランにまで膨らみ、名誉を失いかけた警視総監G――はデュパンに助力を求める。語り手の「私」は警察の報告書と各紙の記事を集め、デュパンはそれを一つずつ検討していく。見つかった死体はマリーではなく彼女はまだ生きているとする『レトワール紙』の説、許婚者サン・トゥースタッシュや身元を確かめたボーヴェエへの疑い、ならず者の一団の仕業とする世間の見方、街なかで誰にも見られずにいたはずがないとする『ル・コメルシエル紙』の説。さらにルール関門近くの茂みでマリーの持ち物が見つかり、近くで茶屋を営むドリュック夫人が、顔色の浅黒い若い男と連れ立った娘と、その後を追うように森へ向かった無頼漢たちを見たと証言する。サン・トゥースタッシュは、凶行の現場と見なされた場所の近くで毒を飲んで死んでしまう。デュパンは新聞の議論の筋道の誤りを次々に指摘していく。そして、茂みの品々はあとから置かれたものであり、犯行は一団ではなくマリーの親しい知り合い一人によるものだと結論する。布の結び方や浅黒い顔色から、その男は船乗りで、マリーの最初の失踪に関わったという海軍士官ではないかと見て、死体を運んだのちに流されたボートを捜すよう提案する。原稿のその先は編集部の判断で省かれ、望んだとおりの結果が得られたことだけが記される。最後に作者は、これはニューヨークで実際に起きたメアリ・セシリア・ロジャーズ殺害事件との暗合として語ったにすぎないと断る。

登場人物

冒頭部(原文より)

 ちょっと見たところあまり不思議なので、ただの暗合としては理知が受け入れられないような暗合に出会って愕然として、超自然的なものをぼんやりと、しかしぞっとしながら、ときによるとなかば信ずるような気持になったことのない人は、非常に冷静な思索家のあいだでも、ごく少ないのである。そのような感情――なぜなら、私の言うそのなかば信ずるような気持というのは、決して考えというほどの十分な力を持っていないのだから――は、偶然の原理、あるいは学術上の言葉で言えば蓋然の計算、によらなければ、たやすく完全に抑えつけることができない。ところで、この計算なるものの本質は、純粋に数学的なものである。だからこそ、われわれは科学でのもっとも厳密に正確なものの変則を、思索界でもっともとらえがたいものの幻影と、非物質性とに適用しようというわけである。

「マリー・ロジェエの怪事件」ポー(青空文庫)

末尾部(原文より)

 それゆえに、私はくりかえして言う。私はこれらのことをただ暗合として語ったにすぎない、と。もう数言つけ加えておこう。不幸なメアリ・セシリア・ロジャーズの運命の世に知られているところと、マリー・ロジェエという娘の身の上のある時期までの運命とのあいだには、ある平行があるということは、私の物語ったところでわかるであろう。その平行は驚くべきほど正確なので、それを考えると理性も困惑するくらいなのである。きっとそういうことがわかるであろうと思う。しかし、マリーの悲惨な物語をいま述べたその時期より後まで進めるときに、私のひそかに意図したことが、その平行の延長を暗示することであるとか、あるいは、女売子の殺人犯人を発見するためにパリで用いられた手段や、または、いくぶんでも似たような推理をもととする手段がいくぶんでも似たような結果を生ずるだろうということをほのめかすことであるなどとは、ちょっとでも臆断されてはならない。

「マリー・ロジェエの怪事件」ポー(青空文庫)

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