火縄銃(江戸川乱歩)のあらすじ・登場人物
犯人のない殺人
- ミステリ
- 文字数
- 9,117字
- 読了目安
- 約18分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
この作品について
平凡社版『江戸川乱歩全集』第十一巻(1932年4月)に収められた短編。冬の山麓のホテルを舞台に、離れで友人が銃で撃たれて死んでいるのが見つかる。現場の状況は義弟を犯人と指していたが、探偵好きの友人は「犯人のない他殺」と主張し、翌日の晴天の下で証拠を見せると宣言する。手がかりを並べて謎解きに至る、明快な本格趣向の一編。
あらすじ
冬休み、語り手の「私」は友人の林一郎から、義弟の二郎とともに滞在する山麓のホテルへの招待を受け、探偵好きの友人、橘を誘って訪ねる。ところが、離れで昼寝をしているはずの林は、内から錠をかけた部屋で左胸を撃たれて死んでいた。机の上には二郎の火縄銃があり、窓の外には下駄の足跡が残り、二郎は事件の時刻に不在で行き先も言わない。刑事は二郎を拘引する。橘は部屋の品物の位置に鉛筆で印をつけたうえで、この事件は犯罪ではないと言い、翌日の午後一時に火縄銃を持って現場に集まるよう刑事に告げ、晴天でなければ証拠は見せられないと付け加える。翌日、橘は机の上の品を前日の位置に戻し、胴衣を着せた藁人形を寝台に寝かせる。一時半が近づくと、机の上の水を満たした球形の玻璃瓶が日の光を集め、火縄銃の点火孔に焦点を結ぶ。弾丸が発射され、藁人形が撃ち抜かれて、犯人のない殺人の真相が明らかになる。
登場人物
- 私 語り手。林の友人
- 橘 探偵狂の学生。事件の真相を見抜く
- 林一郎 山麓のホテルで撃たれて死ぬ
- 二郎 林の義弟。火縄銃の持ち主として疑われる
冒頭部(原文より)
或年の冬休み、私は友人の林一郎から一通の招待状を受け取った。手紙は、弟の二郎と一緒に一週間ばかり前からこちらに来て、毎日狩猟に日を暮しているが、二人だけでは面白くないから、暇があれば私にも遊びに来ないか、という文面だった。封筒はホテルのもので、A山麓Sホテルと名前が刷ってあった。
「火縄銃」江戸川乱歩(青空文庫)
末尾部(原文より)
焦点は太陽の移動と共にジリジリ位置を換て、今や点火孔の真上にその白熱の光りを投げた。と、同時に、鋭い銃声が部屋一杯に響き亙り、銃口からは白い煙がモクモクとゆらめいた。 人々は一様に視線を寝台に移した。 そこには胸を撃たれた藁人形が、ブスブス燃えて転がっていた。
「火縄銃」江戸川乱歩(青空文庫)
原文を読む
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