古典風(太宰治)のあらすじ・登場人物
没落貴族の断章小説
- 心理
- 恋愛
- 文字数
- 10,443字
- 読了目安
- 約21分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
この作品について
1940年(昭和15年)6月、雑誌「知性」に発表された短編。冒頭に「こんな小説も、私は読みたい」と掲げ、伯爵家の嗣子・美濃十郎を中心に、A〜Hの断章で、銀のペーパーナイフ、女中てる、書きつけた手帳、令嬢の手紙、ネロの伝記などを重ねていく。断片を並べる実験的な構成で、没落貴族の自意識と、むなしい恋愛を描く。
あらすじ
伯爵の嗣子・美濃十郎は二十八歳。ある夜、母のペーパーナイフがなくなり、翌朝、新しい女中のてるが盗んだのだと気づくが、美濃は黙って許す。てるは浅草の三味線職の娘で、美濃家に奉公に来たばかり。庭で拾った美濃の手帳には、「誰か殺して呉れ」「没落ばんざい」など奇妙な言葉が並んでいた。美濃のもとには令嬢KRから、愛の告白と別れの手紙が届く。美濃は友人の詩人に、暴君ネロと母アグリパイナの伝記を書いていると朗読して見せる。てるは粗相のため解雇され、美濃は彼女の家を訪ねるが、そこには実直な職人の勘蔵がいた。美濃は実業家の娘ひさと結婚し、華やかな披露宴の写真が新聞に載る。最後は「みんな幸福に暮した」と結ばれる。
登場人物
- 美濃十郎 伯爵家の嗣子。二十八歳で、酒と書きつけに逃げる
- てる 浅草の三味線職の娘。美濃家の十九歳の女中
- 詩人 美濃の遊び仲間
- KR 美濃に手紙で別れを告げる令嬢
冒頭部(原文より)
美濃十郎は、伯爵美濃英樹の嗣子である。二十八歳である。 一夜、美濃が酔いしれて帰宅したところ、家の中は、ざわめいている。さして気にもとめずに、廊下を歩いていって、母の居間のまえにさしかかった時、どなた、と中から声がした。母の声である。僕です、と明確に答えて、居間の障子をあけた。部屋には、母がひとり離れて坐っていて、それと向い合って、召使いのものが五、六人、部屋の一隅にひしとかたまって、坐っていた。
「古典風」太宰治(青空文庫)
末尾部(原文より)
美濃十郎は、実業家三村圭造の次女ひさと結婚した。帝国ホテルで華麗の披露宴を行った。その時の、新郎新婦の写真が、二、三の新聞に出ていた。十八歳の花嫁の姿は、月見草のように可憐であった。 H みんな幸福に暮した。
「古典風」太宰治(青空文庫)
原文を読む
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