明暗(夏目漱石)のあらすじ・登場人物
「未完」で絶たれた漱石の絶筆
- 作者
- 夏目漱石
- 発表
- 1916年(大正5年)5月
- 初出
- 朝日新聞
- 種別
- 小説
- ジャンル
- 心理
- 恋愛
- 舞台
- 東京都
- 文字数
- 322,643字
- 読了目安
- 約10時間45分
- 表記
- 新字新仮名
この作品について
漱石が死の直前まで書き継ぎ、未完のまま絶筆となった最後の長編。夫婦・親族・友人のあいだの微妙なエゴイズムと心理の駆け引きを、これまでにない緻密な筆致で解剖する。主人公・津田と、その妻お延、かつて津田が愛した清子らを配し、人が無意識のうちに自我をむき出しにする様を克明に追う。「則天去私」の境地を目指したとされる作品で、津田が温泉宿で清子と再会する場面の途中、「未完」の二字を残して筆が絶たれている。
あらすじ
会社勤めの津田由雄は、痔の手術を受けることになり、結婚まもない妻・お延との新婚生活のかたわら、自身の過去に心をとらわれている。かつて津田は清子という女性を深く愛していたが、彼女は理由も告げず突然ほかの男のもとへ嫁いでしまった。その傷を抱えたまま、津田は勧められるままお延と結婚したのだった。聡明で誇り高いお延は、夫の愛を確かめようと気を張り、津田の妹お秀や、世話好きな吉川夫人ら周囲の人々との関係のなかで、それぞれの見栄や打算、思惑が複雑に絡み合っていく。津田の心を見透かした吉川夫人は、療養と称して、清子の滞在する温泉宿へ津田をひそかに差し向ける。妻に告げぬまま温泉場へ赴いた津田は、ついに清子と再会を果たす。なぜ自分を捨てたのか——その謎を解こうと清子の微笑の意味を測りかねながら、津田が自分の部屋へ戻るところで、物語は「未完」の二字を残して、永遠に途切れている。
登場人物
- 津田由雄 会社勤めの青年。かつて愛した清子に去られた傷を抱えたまま、お延と結婚している
- お延 津田の妻。聡明で誇り高く、夫の愛を確かめようとする
- 清子 かつて津田が愛した女性。理由も告げず津田のもとを去った
- 吉川夫人 世話好きの夫人。津田を清子のいる温泉宿へ差し向ける
- お秀 津田の妹
人物相関図
章ごとの「厳選あらすじ」
アプリでは、この作品を次の章立てで詳しく読めます(全文はアプリ内)。
- 一 この作品について
- 二 主要人物
- 三 主要なサブキャラクター
- 四 発端──「まだ奥がある」
- 五 藤井の家、小林という男
- 六 芝居の一日──お延をめぐる人々
- 七 病室──兄妹の衝突と、妻の到来
- 八 二つの探り合い──同じ日の午後
- 九 妥協──夫婦の一夜
- 一〇 送別会と旅立ち
- 一一 温泉場──清子との再会、そして「未完」
- 一二 重要な設定と伏線
冒頭部(原文より)
医者は探りを入れた後で、手術台の上から津田を下した。「やっぱり穴が腸まで続いているんでした。この前探った時は、途中に瘢痕の隆起があったので、ついそこが行きどまりだとばかり思って、ああ云ったんですが、今日疎通を好くするために、そいつをがりがり掻き落して見ると、まだ奥があるんです」
『明暗』夏目漱石(青空文庫)
末尾部(原文より)
清子はこう云って微笑した。津田はその微笑の意味を一人で説明しようと試みながら自分の室に帰った。
『明暗』夏目漱石(青空文庫)
原文を読む
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