女の決闘(太宰治)のあらすじ・登場人物
原作を書き継ぐ大胆な実験
- 心理
- 恋愛
- 文字数
- 37,661字
- 読了目安
- 約1時間15分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
この作品について
太宰治が1940年(昭和15年)1月から『月刊文章』に連載した中編。ドイツの作家オイレンベルクの短編「女の決闘」(森鷗外訳で知られる)を、一段落ずつ引用しては批評を加え、ときに想像で先を書き継いでいく、翻訳・評論・創作の境界をまたぐ実験的な作品。夫をめぐる二人の女の決闘を素材に、女の嫉妬と情熱、そして小説を書くという営みそのものを見つめ直す。太宰の批評精神が表れた異色作。
あらすじ
ドイツの作家オイレンベルクの短編「女の決闘」——夫に若い女子学生の愛人がいることを知った妻が、その女に果たし合いを申し込み、ピストルで撃ち殺す物語——を、太宰は一段落ずつ引用しながら読み解いていく。引用に続けて、太宰は原作者の筆の運びを批評し、時にその先を自分の想像で補い、女たちの心理の奥へと分け入っていく。決闘に臨む妻の覚悟、撃たれて死ぬ女子学生の内面、事件のあとの夫の姿——原作の筋を追うようでいて、いつしか語りは太宰自身の創作へとすべり込んでいく。翻訳と批評と創作が渾然と溶けあうなか、物語は「女は、恋をすれば、それっきりです。ただ、見ているより他はありません」という牧師の言葉で静かに閉じられる。
登場人物
- 妻 夫の愛人に決闘を挑み、ピストルで射殺する(オイレンベルクの原作の主人公)
- 女子学生 夫の愛人。決闘で撃たれて死ぬ
- 私(太宰) 原作を引用し、批評し、その先を想像で書き継ぐ語り手
冒頭部(原文より)
一回十五枚ずつで、六回だけ、私がやってみることにします。こんなのは、どうだろうかと思っている。たとえば、ここに、鴎外の全集があります。勿論、よそから借りて来たものである。私には、蔵書なんて、ありやしない。これを、これから一緒に読んでみます。
「女の決闘」太宰治(青空文庫)
末尾部(原文より)
牧師さんは顔を赤くして笑い、やがて笑いを収め、澄んだ眼で私をまっすぐに見ながら、 「女は、恋をすれば、それっきりです。ただ、見ているより他はありません。」 私たちは、きまり悪げに微笑みました。
「女の決闘」太宰治(青空文庫)
原文を読む
原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。