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素戔嗚尊(芥川龍之介)のあらすじ・登場人物

追われた醜い剛力の若者

  • 幻想
  • 冒険

芥川龍之介 1920年(大正9年)3月 「大阪毎日新聞」

文字数
42,829字
読了目安
約1時間26分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 島根県

この作品について

『古事記』『日本書紀』に登場する素戔嗚尊を、神話ではなく、荒々しい一人の若者の物語として書いた長めの連載小説。高天原で疎まれる孤独と恋、追放と放浪、そして八俣の大蛇に出会うまでが描かれる。大蛇退治のあとの話は、『老いたる素戔嗚尊』が受け持つ。

あらすじ

春の高天原。容貌は醜いが、並ぶ者のない膂力をもつ若者素戔嗚は、力競べで他の若者たちの嫉妬を買い、巌石を担ぎ合った猪首の若者が死んでからは、孤立を深める。思兼尊の姪にあたる快活な娘に想いを寄せた彼は、牛飼いの若者に琅の勾玉を託して気持ちを伝えようとするが、若者は美貌の若者に誘われ、勾玉をすり替えていた。真実を知った素戔嗚は怒り狂い、乱闘と火事のなかで部落の者たちに捕らえられる。思兼尊らのとりなしで死刑は免れるが、髭を抜かれ、爪を剥がされて追放される。山中の洞穴で大気都姫と十六人の女たちに迎えられ、一年余り放縦に暮らすが、黒犬への嫉妬から大気都姫を誤って刺し、逃げ出す。湖畔の雷雨のあと、自然の声を取り戻した彼は、七年の放浪ののち、出雲の簸の川で泣いている櫛名田姫を見つけ、高志の大蛇と戦う決意をする。

登場人物

冒頭部(原文より)

 高天原の国も春になった。  今は四方の山々を見渡しても、雪の残っている峰は一つもなかった。牛馬の遊んでいる草原は一面に仄かな緑をなすって、その裾を流れて行く天の安河の水の光も、いつか何となく人懐しい暖みを湛えているようであった。ましてその河下にある部落には、もう燕も帰って来れば、女たちが瓶を頭に載せて、水を汲みに行く噴き井の椿も、とうに点々と白い花を濡れ石の上に落していた。

「素戔嗚尊」芥川龍之介(青空文庫)

末尾部(原文より)

「そうです。とうとう来たようです。神々の謎の解ける時が。」  彼は対岸に眼を配りながら、おもむろに高麗剣の柄へ手をかけた。するとその言葉がまだ終らない内に、驟雨の襲いかかるような音が、対岸の松林を震わせながら、その上に疎な星を撒いた、山々の空へ上り出した。

「素戔嗚尊」芥川龍之介(青空文庫)

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