反自然主義とは
- 分類
- 文芸思潮
- 読み
- はんしぜんしゅぎ
明治末に文壇を制した自然主義に対し、それぞれの立場から距離を取った作家・流派をまとめて呼ぶ文学史上の呼称。統一された運動ではなく、事実の暴露と告白へ傾く自然主義に飽き足りない人々の総称である。夏目漱石・森鴎外は、人生を高みから眺める知性と余裕を保って余裕派・高踏派と呼ばれ、永井荷風・谷崎潤一郎らの耽美派は道徳を離れた官能美・退廃美を追い、武者小路実篤・志賀直哉・有島武郎らの白樺派は人道主義と個性の肯定を高らかに掲げた。やや遅れて登場した芥川龍之介・菊池寛らの新思潮派(新現実主義)も、現実を理知の目で捉え直す立場から自然主義と一線を画している。ただし「反自然主義」は、のちの文学史が見通しをよくするために与えた呼び名であり、当人たちが同じ旗のもとに集まったわけではない。これらが並び立った明治末から大正にかけての時期は、近代日本文学がもっとも多彩な花を咲かせた季節であり、その後の文学の主要な流れの多くはここから分かれ出ている。