切支丹物とは
- 分類
- 形式・ジャンル
- 読み
- きりしたんもの
戦国時代から江戸初期にかけてのキリシタン(日本のカトリック信徒)や宣教師、禁教と殉教の歴史を題材にした小説の総称。とくに芥川龍之介が大正5年(1916年)の『煙草と悪魔』から晩年の『誘惑』まで書き継いだ十数編の短編群を指して言うことが多く、どの作品を含めるかは論者によって異なる。芥川は、長崎の教会に拾われた美しい少年をめぐる『奉教人の死』(大正7年)を、文禄・慶長ごろの口語を思わせる古雅な文体で書き、聖クリストフォロスの伝説を翻案した『きりしとほろ上人伝』では天草本『伊曾保物語』風の語り口を用いた。殉教した「神聖な愚人」を描く『じゅりあの・吉助』、日本の風土が外来の教えを作り変える力を語る『神神の微笑』、三人の告白で一つの事件を語る『報恩記』、細川ガラシャの最期を侍女の候文の覚え書で描く『糸女覚え書』など、題材も形式も多彩である。昭和に入ると、江戸中期に潜入したイタリア人宣教師シドッチと新井白石の対面を、太宰治が『地球図』で、坂口安吾が殉教の歴史をたどる『イノチガケ』で描いた。明治末の詩人たちの南蛮趣味とも響き合いながら、異国の信仰と日本人の心のありようを問う系譜として読まれている。