アプリで読む

無料・登録不要

奉教人の死(芥川龍之介)のあらすじ・登場人物

古雅な擬古文の切支丹物

  • 歴史
  • 心理

芥川龍之介 1918年(大正7年)9月 「三田文学」

文字数
9,631字
読了目安
約19分
表記
新字旧仮名
種別
小説
舞台
  • 長崎県

この作品について

芥川龍之介が1918年(大正7)9月、『三田文学』に発表した短編。「切支丹物」と呼ばれる一群のなかの代表作で、慶長年間の宗教書を思わせる古雅な擬古文で語られる。長崎の教会に身を寄せる美しい少年「ろおれんぞ」をめぐる話が、聖人伝のような体裁で綴られる。芥川が好んだ、古い文体と異国趣味の組み合わせが際立つ作品で、同じ切支丹物の「おぎん」「神神の微笑」とあわせて読まれる。

あらすじ

長崎の「さんた・るちや」寺院に、みなしごの美少年「ろおれんぞ」が拾われて育っていた。玉のように清らかな顔立ちで、兄のように慕う信徒「しめおん」をはじめ人々に可愛がられていたが、やがて傘張の娘と親しくしているという噂が立つ。娘が身ごもると、ろおれんぞは相手として名指しされるが、頑なに否定するばかりで弁明せず、ついに寺を追われ、乞食となって町をさまよう。一年あまり後、長崎に大火が起こり、逃げ遅れた娘の赤子を救うため、ろおれんぞは猛火の中へ飛び込む。子を救って重傷を負ったろおれんぞを、しめおんが火の中から助け出す。娘が自分の偽りを泣いて告白し、伴天連が語りかけるなか、焼けた衣の下からろおれんぞが女であったことが明らかになる。人々が見守るなか、ろおれんぞは安らかな微笑を唇に残して息絶える。その一生は誰にも知られなかったが、この一刹那の感動にこそ人の世の尊さは極まるのだと、語り手は静かに結ぶのだった。

登場人物

冒頭部(原文より)

去んぬる頃、日本長崎の「さんた・るちや」と申す「えけれしや」(寺院)に、「ろおれんぞ」と申すこの国の少年がござつた。

「奉教人の死」芥川龍之介(青空文庫)

末尾部(原文より)

なべて人の世の尊さは、何ものにも換へ難い、刹那の感動に極るものぢや。暗夜の海にも譬へようず煩悩心の空に一波をあげて、未出ぬ月の光を、水沫の中に捕へてこそ、生きて甲斐ある命とも申さうず。されば「ろおれんぞ」が最期を知るものは、「ろおれんぞ」の一生を知るものではござるまいか。

「奉教人の死」芥川龍之介(青空文庫)

名文

なべて人の世の尊さは、何ものにも換へ難い、刹那の感動に極るものぢや。

「ろおれんぞ」が実は女であったと明かされたあと、語り手が添える評言。キリシタン版の文体をまねた擬古文で、一瞬の感動にこそ人生の価値があるという芥川の芸術観を響かせる。

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

青空文庫の図書カード

同じ作家の作品

近い作品