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顎十郎捕物帳 永代経(久生十蘭)のあらすじ・登場人物

焼け跡の死骸と、寺に納めた二十両

  • ミステリ
  • 歴史

久生十蘭 1940年(昭和15年)3月 「奇譚」

文字数
13,984字
読了目安
約28分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

久生十蘭が1939年(昭和14年)から雑誌『奇譚』に六戸部力の名義で連載した「顎十郎捕物帳」の一編。長い顎から「顎十郎」と呼ばれる仙波阿古十郎は、江戸一の捕物名人と言われながら奉行所を辞め、いまは相棒のとど助と駕籠を担いでいる。本編では、柳橋で紺屋の京屋が焼け、主人の吉兵衛が焼死する。隣の湯治場料理屋「大清」とは地所をめぐって争っており、吉兵衛の女房はその大清の後添いに収まっていた。かつての手先ひょろ松が鮮やかに事件を解いてみせたかに見えたとき、駕籠屋の顎十郎が一言、異を唱える。

あらすじ

天保の改革のころ、浅草柳橋の紺屋・京屋吉兵衛は、隣に越して来た湯治場料理屋「大清」の藤五郎から地所を売れと迫られるが、いくら積まれても応じない。藤五郎は張場の日を遮る三階を建てて追い出しにかかり、やがて吉兵衛の女房おもんまでが三下り半をもらって大清の後添いに収まった。六月十五日の夜、京屋が全焼し、吉兵衛は焼死する。ひょろ松は、死骸が瓦の上にあり、鼻孔に煤がないことから、吉兵衛は殺されてから大清の三階の出窓から非常梯子で火の中へ落とされたと見る。そこへ、おもんが土蔵で血を吐いて死んだとの知らせが入る。持病の癪の薬が毒にすり替えられ、土蔵の壁には血で「とうごらう」と書かれていた。ひょろ松は、藤五郎が京屋に火をつけ、おもんに吉兵衛を殺させ、そのおもんを毒殺したと見事に追及して引き立てる。ところが話を聞いた駕籠屋の顎十郎は、藤五郎には殺す理由がなく、手口がわざとらしすぎると首をひねる。吉兵衛の菩提寺を訪ねると、吉兵衛は墓の前で考え込んでばかりいて、死ぬ数日前に二十両の永代経料を納めていた。その包みの日付は「六月十五日」。顎十郎は、吉兵衛が、藤五郎が夜網に出て留守になる十五日を選び、二人に疑いがかかるよう仕組んで、自ら家に火を放って死んだのだと見抜く。印籠の薬をすり替えたのも、藍で藤五郎の着物を汚したすきの吉兵衛の仕業だった。

登場人物

冒頭部(原文より)

   角地争い  六月十五日の四ツ半(夜の十一時)ごろ、浅草柳橋二丁目の京屋吉兵衛の家から火が出、京屋を全焼して六ツ(十二時)過ぎにようやくおさまった。

「顎十郎捕物帳 永代経」久生十蘭(青空文庫)

末尾部(原文より)

「……印籠の薬を毒とすりかえたのは、そのあいだに吉兵衛がやった仕業なンだ」  と言って、小馬鹿にしたような顔で、ひょろ松のほうへニヤリと笑って見せた。

「顎十郎捕物帳 永代経」久生十蘭(青空文庫)

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