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顎十郎捕物帳 紙凧(久生十蘭)のあらすじ・登場人物

消えた三万二千両と空に舞う烏凧

  • ミステリ
  • 歴史

久生十蘭 

文字数
21,327字
読了目安
約43分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

久生十蘭が1939年(昭和14年)から雑誌『奇譚』に六戸部力の名義で連載した「顎十郎捕物帳」の一編(本編の初出は未詳)。長い顎から「顎十郎」と呼ばれる仙波阿古十郎は、甲府勤番を辞めて江戸に戻り、大名屋敷の中間部屋を転々としてごろごろしている風来坊。本編では、金座から勘定所へ船で運ばれる途中の御用金のうち、三万二千両の千両箱の中身が錆釘や石ころにすり替わっていた。南町の藤波友衛が金座の子供があげた一枚の凧に目をつけるなか、顎十郎は火除地の原っぱで、子供にまじって凧あげに夢中になる。

あらすじ

十一月なのに春のように暖かい日、松平佐渡守の中間部屋で寝転がる顎十郎のもとへ、御用聞のひょろ松が新酒を手に頼みに来る。金座から神田橋の勘定所へ船で送った二十万両のうち、千両箱三十二の中身が錆釘や石ころに変わっていた。途中で石船に衝突され、役人たちが川に投げ出された騒ぎの間にすり替えられたらしい。金座の中を見て回った顎十郎は、長屋の空地で下役の子供たちが揃って烏凧をあげているのに目をとめる。一方、南町の藤波友衛は、御用金が出る直前の明け方に金蔵方・立馬左内の息子芳太郎が白地に赤い縞の凧をあげていたことから、それを外の一味への合図と見て父子を引き挙げた。顎十郎は毎日原っぱで凧あげをしながら考え、やがて藤波を、前夜に行灯凧が落ちて小火の出た松平越前の厩へ呼び出す。風向きから見て行灯凧は金座からあがったもので、合図をするなら前夜のうちにできたこと、そして芳太郎の凧は松の枝にひっかかったままで、合図など届いていなかったことを示す。さらに金座のそばで自分の烏凧をあげて見せると、小田原町の鳶凧はなぜか顎十郎の凧を避け、低く飛ぶ金座の烏凧ばかりを狙う。金蔵方の石井宇蔵が日ごろ少しずつ小判を抜き、吹屋の棟梁と純金に吹き分けて、手作りの凧の竹骨に金の針金として仕込み、凧合戦に見せかけて外の一味に渡していたのだった。船のすり替えは、内部の犯行を隠すための見せかけにすぎなかった。

登場人物

冒頭部(原文より)

新酒 「……先生、お茶が入りました」 「う、う、う」 「だいぶと、おひまのようですね。……鞴祭の蜜柑がございます、ひとつ召しあがれ」

「顎十郎捕物帳 紙凧」久生十蘭(青空文庫)

末尾部(原文より)

顎十郎は、へへん、と笑って、 「……さあ、藤波さん、早く行って小田原町のとんびをみんな召捕っておしまいなさい。早くしないと、空へ逃げてしまいますぜ。……それから、金蔵方の石井宇蔵、ほかに吹屋の棟梁がひとり……」

「顎十郎捕物帳 紙凧」久生十蘭(青空文庫)

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

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