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顎十郎捕物帳 蠑螈(久生十蘭)のあらすじ・登場人物

天井裏の釘づけの祟り

  • ミステリ
  • 歴史

久生十蘭 

文字数
12,328字
読了目安
約25分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

久生十蘭の連作「顎十郎捕物帳」の一編で、全集では連作の最終話に置かれる。長い顎から「顎十郎」と呼ばれる仙波阿古十郎は、もと北町奉行所の江戸一の捕物名人。いまは相棒のとど助と駕籠を担ぐしがない渡世だが、持ち込まれた難事件は放っておけない。本編では、深川の朝湯で、阿波屋という家で半年足らずのうちに一家六人が次々と謎の死を遂げているという噂を耳にした顎十郎のもとへ、なじみの大工が青い顔で現れ、六人を殺したのは自分だと打ち明ける。天井裏に釘づけにされた生き物の祟りという怪談めいた話の奥に、顎十郎は何を見るのか。

あらすじ

雨模様の朝、深川の湯で、アコ長こと顎十郎ととど助は、阿波屋で今年の五月から総領・三男・女房・姉娘・次男、そしてけさ四男と、六人が次々に死んだという噂を聞く。湯から上がると、なじみの大工清五郎が、六人を殺したのは自分だと思い詰めた顔で打ち明ける。三年前に自分が建てた阿波屋の離れの天井裏で、この二月、五寸釘で胴を貫かれたまま生きている守宮と、親に餌を運ぶ無数の子守宮を見て逃げ帰り、そのまま黙っていた。死んだ者の胸には、ちょうど釘の位置に赤い痣が浮いていたというのだ。天井裏に入った顎十郎は、釘がまだ新しく、虫も守宮ではなく水辺の蠑螈であること、埃に足袋はだしの足跡があることに気づく。離れには、阿波屋の末娘お節を花見の帰りに救った浪人・新田数負が居候しており、父は蘭方医だという。生き残ったのは主人とお節と数負だけ。数負が毒を盛ったかと見たとき、その数負がよろめき倒れ、体に同じ赤痣を浮かべて高熱にうなされる。数負にすがって泣いたお節は、そっと天井裏から蠑螈を持ち出してきた。想う人の部屋の天井に生きた蠑螈を打ちつければその人は立ち去れないという恋のまじないで、取り替えが遅れたせいで祟ったと思い込んでいたのだ。そのとき、油蔵の壁ぎわの草むらから一匹の蝮が這い出して油壺へ潜り込む。それは江戸にはいない阿波の蝮「くろはみ」で、油壺を包む筵にまぎれて運ばれてきたのだった。六人の死も赤痣も、蝮が人を咬む時季と重なるその毒のしわざだった。

登場人物

冒頭部(原文より)

   朝風呂  阿古十郎ことアコ長。もとは北町奉行所に属して江戸一の捕物の名人。ひょんなこと役所をしくじって、今はしがない駕籠舁渡世。

「顎十郎捕物帳 蠑螈」久生十蘭(青空文庫)

末尾部(原文より)

「お節さん、蝮蛇に咬まれなすったか」  お節は首を振って、 「いいえ、大丈夫」 「それはよかった。……これで新田さんの病いのもともわかったから、きっと助けてあげます、あなたはこの蠑を堀の水へかえして、早く咒いをといて来なさい」

「顎十郎捕物帳 蠑螈」久生十蘭(青空文庫)

原文を読む

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