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明治開化 安吾捕物 その七 石の下(坂口安吾)のあらすじ・登場人物

死に際の指が示す碁の手筋

  • ミステリ
  • 歴史

坂口安吾 1951年(昭和26年)4月 「小説新潮」

文字数
32,242字
読了目安
約1時間4分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 埼玉県

この作品について

坂口安吾の連作探偵小説「明治開化 安吾捕物」の第七話で、1951年(昭和26年)4月の「小説新潮」に掲載された。維新の動乱のさなか、武州川越在の豪農で名高い碁打ちの千頭津右衛門が、江戸の賭け碁の名人甚八との対局中に急死する。死に際に必死で碁盤を指し示したのは、父から子へ口伝えされる千頭家の秘密――言い伝えでは隠された金箱のありか――を伝えようとしたものだったのか。二十年後、二十一回忌の法要に呼ばれた甚八の周りで、財宝を狙う親族と、屋敷に住みついた山の神の行者一家の思惑がうごめく。碁の手筋「石の下」が謎の鍵を握る一編。

あらすじ

幕末、川越在の豪農千頭津右衛門は、江戸から乗り込んだ賭け碁の名人甚八を四目まで打ち込んだ夜、急な発作で死ぬ。息を引き取るまで碁盤を指し続けたのは、千頭家で父から息子へ口伝えされる秘密を伝えようとしたためらしかった。妻の千代は、甚八が見落とした碁の手筋「石の下」こそ夫の言いたかった言葉だと気づき、家の系図に残された謎の文字とともに胸にしまい込む。二十年後、一人息子の東太は知恵が遅れたまま育ち、屋敷には山の神の行者和具志呂足の一家が住みついて、二十一回忌の日に東太の祟りが解けると予言していた。千代の兄で強欲な安倍天鬼も財宝を狙って出入りする。法要に呼ばれた甚八は粗末な扱いに腹を立てながらも、村を聞き歩いて「石の下」に気づき、山の神の祭るタナグ山を探り始める。法要の前夜、二十年前の対局をそのまま再現する儀式のさなか、千代が出した茶を飲んだ甚八は、かつての津右衛門と同じようにもがいて毒死した。千代が疑われて捕らえられると、新十郎は甚八の足取りをたどり、千代から当夜の様子を聞き出す。勝海舟は天鬼が塩壺に毒を仕込んだと見立てるが、新十郎は儀式を再び演じさせ、台所に一人残った行者の娘宇礼を見つめ続ける。暗示にかかりやすい宇礼は、前と同じように塩壺の塩を捨てて詰め替えてみせ、行者一家の企みが露見した。甚八は、千代に罪を着せるためだけに呼ばれていたのである。

登場人物

冒頭部(原文より)

「私は六段格で。ヘッヘ」  と、甚八はさッさと白をとった。神田の甚八といえば江戸名題の賭碁のアンチャン。本職は大工だが、碁石を握ると素人無敵、本因坊にも二目なら絶対、先なら打ち分けぐらいでしょうなとウヌボレのいたって強い男。川越くんだりへ来て、手を隠すことはない。

「明治開化 安吾捕物 その七 石の下」坂口安吾(青空文庫)

末尾部(原文より)

 虎之介の報告をきいて、海舟は静かにうちうなずいた。そして、何も云わなかった。  やがて房をよんで、碁盤を持参させた。 「虎は碁をうつかエ」 「ハ。ヘタの横好きで」 「虎のタンテイ眼では、碁がヘタなことは知れている。石の下を心得ているかエ」 「ハ。それを心得ませぬのが、まこと痛恨の至りで」 「石の下とは、こんな手筋だ」  海舟はサラサラと並べてみせた。それを私が代って読者に解説すると次のようなことになる。

「明治開化 安吾捕物 その七 石の下」坂口安吾(青空文庫)

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