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顎十郎捕物帳 初春狸合戦(久生十蘭)のあらすじ・登場人物

一匹二両、狸を運ぶ駕籠屋

  • ミステリ
  • 歴史

久生十蘭 1940年(昭和15年)1月 「奇譚」

文字数
12,819字
読了目安
約26分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

久生十蘭が1939年(昭和14年)から雑誌『奇譚』に六戸部力の名義で連載した「顎十郎捕物帳」の一編。長い顎から「顎十郎」と呼ばれる仙波阿古十郎は、江戸一の捕物名人と言われながら、女賊にしてやられた不始末から北町奉行所を飛び出し、いまは浪人くずれの大入道・雷土々呂進(とど助)と組んで「アコ長」の名で辻駕籠を担いでいる。本編は、客にあぶれて空きっ腹を抱えた二人が、麻布狸穴の暗がりで「わたしは狸です」と名乗る奇妙な客に呼び止められる話。とぼけた掛け合いが楽しい、正月らしい狐狸譚仕立ての一編である。

あらすじ

正月十日の金比羅参りの日、俄か駕籠屋のアコ長こと顎十郎と相棒のとど助は、朝から客にあぶれっぱなし。とど助の口先で泥鰌屋の勘定を踏み倒した帰り、麻布狸穴の坂で、暗闇から呼び止める痩せた小男に出会う。男は、自分は金比羅様のお供で讃岐から来た禿狸で、犬が増えて住みにくくなったので、眷族三百三十三匹を毎晩一匹ずつ豊島ガ岡まで運んでほしいと頼み、本物の古い乾字小判で駄賃を払う。二人は一匹二両で引き受け、毎夜、目つきの悪い「狸」たちを豊島ガ岡の草原まで送り届けた。七日目の晩には美しい雌狸を乗せたが、翌朝、その駄賃が鉛被せの贋金だったことに気づく。しかも護持院原では、その雌狸が斬り殺されていた。かつての手先ひょろ松から、女は京大坂に流れる贋小判の一味らしいと聞いたアコ長は、上方では贋金を「たぬき」と呼ぶことに思い当たる。やがて豊島ガ岡に「えぞたぬき」が住みついて狸囃子をするという評判が立ち、見物人が押し寄せるが、囃していたのはアコ長ととど助とひょろ松だった。仕事の邪魔をされた一味が斬りかかってきたところを捕らえると、豊島ガ岡の古墳の下で贋小判を大仕掛けに鋳造しており、二人が運んでいた「狸」は、それを上方から買い出しに来た贋金買いの連中だったと白状した。

登場人物

冒頭部(原文より)

   あぶれ駕籠 「やけに吹きっつぁらしますね」 「うるるる、これはたまらん。睾丸が凍えるわ」

「顎十郎捕物帳 初春狸合戦」久生十蘭(青空文庫)

末尾部(原文より)

 このへんで贋金を作っているのだろうがその場所がどこにあるのかわからない。むやみに人をよせて仕事の邪魔をしたら、かならずなにか仕掛けてくると思っていたら、果して、三日目の夜、ステテンとやっている三人に斬りかかって来た浪人者があった。それを取っつかまえたらすぐ白状した。見こみ通り、狸穴から駕籠でここへ運ばれて来たのは、江戸豊島ガ岡の古墳の下で大仕掛に鋳造している鉛被せ一両小判を一枚二朱ずつで京大坂から買いだしに来た贋金買いの連中だった。

「顎十郎捕物帳 初春狸合戦」久生十蘭(青空文庫)

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