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顎十郎捕物帳 捨公方(久生十蘭)のあらすじ・登場人物

将軍の双子を捜せ、風来坊の立回り

  • ミステリ
  • 歴史

久生十蘭 1940年(昭和15年)8月 「奇譚」

文字数
18,022字
読了目安
約36分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都
  • 千葉県
  • 埼玉県

この作品について

久生十蘭が1939年(昭和14年)から雑誌『奇譚』に六戸部力の名義で連載した「顎十郎捕物帳」の一編で、全集では連作の第一話に置かれる。主人公の仙波阿古十郎は、顔の半分を占める長い顎から「顎十郎」とあだ名される風来坊の浪人。甲府勤番を放り出して江戸へ戻る途中、下総の不知森で断食する老僧に呼び止められ、将軍家に秘された双子の片割れ「捨蔵さま」を捜してほしいと頼まれる。お庭番と大老一派が同じ手がかりを追うなか、飄々とした顎十郎の型破りな行動が始まる。

あらすじ

甲府勤番を飛び出した風来坊・仙波阿古十郎は、江戸へ帰る途中、八幡の不知森で二十一日断食して彼を待っていた老僧・祐堂に呼び止められる。将軍家定には生まれてすぐ隠された双子の兄・捨蔵がおり、その居所を示す漢字三字のうち「五」の一字だけが和尚の手に残った。失脚から異例の復職を遂げた大老水野がこの秘事を種に将軍を脅しているのではと案じる和尚は、水野より先に捨蔵を見つけて出家を勧める手紙を渡してほしいと頼み、そのまま森で命を終える。その夜、顎十郎は国府台の断崖で、お庭番の村垣らに綱を切られて川へ落とされた女・お八重を救う。お八重に頼まれて評定所の目安箱を白昼堂々と盗み出し、中の密訴状から水野一派が「大」の字を握っていることを知る。逃げ込んだ吹上の庭では、村垣が将軍に「鹿」の字を報告するのを松の上で聞き、三字を「五・大・鹿」すなわち「草加」と解く。ところがお八重に痺れ薬を盛られて和尚の手紙を読まれ、出し抜かれる。それでも草加へ駕籠を飛ばすと、後ろにはお八重と村垣の早駕籠がついてくる。顎十郎は途中で駕籠から転げ出し、空の駕籠に追っ手を引きつけさせた。捨蔵は草加で寺子屋を開いて妻と穏やかに暮らしており、やがて上野の輪王寺に入る。まもなく水野は失脚した。

登場人物

冒頭部(原文より)

不知森  もう秋も深い十月の中旬。  年代記ものの黒羽二重の素袷に剥げちょろ鞘の両刀を鐺さがりに落しこみ、冷飯草履で街道の土を舞いあげながら、まるで風呂屋へでも行くような暢気な恰好で通りかかった浪人体。船橋街道、八幡の不知森のほど近く。

「顎十郎捕物帳 捨公方」久生十蘭(青空文庫)

末尾部(原文より)

捨蔵さまは、なかなか剃髪する決心がつかなかったが、それから二月ののち、上野の輪王寺へはいった。  それから間もなく水野が失脚し、再び立つことが出来なくなった。

「顎十郎捕物帳 捨公方」久生十蘭(青空文庫)

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