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顎十郎捕物帳 かごやの客(久生十蘭)のあらすじ・登場人物

姫君の酌と、居酒屋の毒流し

  • ミステリ
  • 歴史

久生十蘭 1940年(昭和15年)4月 「奇譚」

文字数
13,550字
読了目安
約27分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

久生十蘭が1939年(昭和14年)から雑誌『奇譚』に六戸部力の名義で連載した「顎十郎捕物帳」の一編。長い顎から「顎十郎」と呼ばれる仙波阿古十郎は、もと江戸一の捕物名人。いまは浪人くずれのとど助と組んで、さっぱり客のつかない辻駕籠を担いでいる。本編では、開店祝いのただ酒めあてに神田柳原の居酒屋「かごや」へ入った二人が、陸尺あがりの亭主と中間たちの酒盛りに加わる。亭主が、三十二万石の大名の姫が自分に惚れていると大法螺を吹き、まさかと思う姫君が本当に現れたことから、思いがけない大事件が始まる。

あらすじ

開店祝いのただ酒を求めて、アコ長こと顎十郎ととど助は神田柳原の居酒屋「かごや」に入る。亭主の六平は藤堂家の陸尺あがりで、中間仲間五人が店を買い切って景気をつけていた。造作の豪勢さを怪しまれた六平は、金主は藤堂和泉守の息女・加代姫で、姫は自分に惚れているのだと吹聴する。それならここへ呼んで酌をさせろという話になり、とど助が面白がって呼び出しの手紙を代筆する。小半刻ののち、本当に気高く冷たい美貌の加代姫が現れ、「酌をしてとらする」と徳利を取る。凄味に恐れをなした二人は一目散に逃げ出した。翌日、ひょろ松から、加代姫が六人を番木鼈の毒で殺したと大騒ぎになっていると聞かされる。顎十郎は、自分の姿を見られたうえで手を下す馬鹿はいないと加代姫の無実を確信する。屋敷に押し込められた加代姫は、ようやく、寵愛した小姓・三枝数馬を父の目から長持に隠したところ息絶えてしまい、その亡骸を六平に始末させたことを打ち明ける。顎十郎は「かごや」に乗り込み、宿敵の藤波友衛の前で、飯台の盃が八つのはずなのに九つあることを指摘する。一つの盃の下には、小姓が使う薄紅梅のお小姓紙が盃台として敷かれていた。死んだと思われた数馬は濠で簀巻きがほどけて生き延び、加代姫が帰ったあとに店へ来て、自分を沈めた六人を毒殺したのだった。

登場人物

冒頭部(原文より)

   お姫様 「なんだ、なんだ、てめえら。……客か、物貰いか、無銭飲か。ただしは、景気をつけに来たのか。店構えがあまり豪勢なんで、びっくりしたような面をしていやがる。……やいやい、入るなら入れ、そんなところに突っ立ってると風通しが悪いや」

「顎十郎捕物帳 かごやの客」久生十蘭(青空文庫)

末尾部(原文より)

……いちばん手近な盃の下に懐紙を四つに折って盃台にしてあるでしょう。懐紙の紙はご覧のように、薄紅梅を刷りこんだお小姓紙。懐紙で盃をうけることは小姓でなければしないことです。……嘘だと思ったら、あの盃を改めてごらんなさい。あの盃だけには毒がはいってないはずですから……」

「顎十郎捕物帳 かごやの客」久生十蘭(青空文庫)

原文を読む

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