アプリで読む

無料・登録不要

顎十郎捕物帳 両国の大鯨(久生十蘭)のあらすじ・登場人物

六間半の鯨が一夜で消えた

  • ミステリ
  • 歴史

久生十蘭 1940年(昭和15年)5月 「奇譚」

文字数
13,422字
読了目安
約27分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

久生十蘭が1939年(昭和14年)から雑誌『奇譚』に六戸部力の名義で連載した「顎十郎捕物帳」の一編。長い顎から「顎十郎」と呼ばれる仙波阿古十郎は、もとは江戸一の捕物名人。いまは相棒のとど助と駕籠を担ぎながら、かつての手先ひょろ松の持ち込む難事件を飄々と解いていく。本編では、大盗・伏鐘重三郎の一味が大名屋敷の金蔵から七万六千両を奪う大事件と並んで、両国の見世物小屋に江戸で初めての生きた黒鯨がやって来て、町じゅうの大評判になる。ところがその巨大な鯨が、一夜のうちに小屋から消え失せてしまう。

あらすじ

二十六夜待の晩、稼ぎすぎてへとへとのアコ長こと顎十郎ととど助は、帰り道の辻々で目明しに咎められ、ついには当身を食らわせた相手がひょろ松だったという始末。聞けば、伏鐘重三郎の一味が酒井家の金蔵の土台を水で緩めて七万六千両を盗み出し、千両箱を張抜きの石で包んだ石船で運ぶところを押さえたが、頭の重三郎だけは芝浦の原で煙のように消えたという。やがて両国の見世物小屋に、高物師・深草六兵衛が金華山から運んだ黒鯨がかかり、口上と踊りつきの見世物は江戸じゅうの大評判になる。ところが当祝の夜、六間半もある鯨が、わずか十分ほどのあいだに、小屋を壊した跡もなく消えてしまった。ひょろ松から話を聞いた顎十郎は、鯨は大勢で切り刻んで運び出し、その間は梁から吊った鯨の絵幕で、月明かりのなか本物がいるように見せかけていたと見抜く。さらに、伏鐘が消えた場所も、鯨が陸揚げされた場所も芝浦だと気づく。追い詰められた重三郎は鯨の口の中へ逃げ込んだものの、そのまま見世物にされて出られなくなっていたのだ。子分たちは重三郎を救い出し、足がつかないよう鯨ごと昇天したように見せかけたのだった。顎十郎は、四方の辻番に囲まれた界隈から誰も出ていないと読み、両国二丁目の大弓場に踏み込む。重三郎は妾と鯨鍋をつついており、「仙波さんにかかっちゃかなわねえ」と苦笑した。

登場人物

冒頭部(原文より)

   二十六夜待  七月二十六日は二十六夜待で、芝高輪、品川、築地の海手、深川洲崎、湯島天神の境内などにはほとんど江戸じゅうの老若が日暮まえから押しだして月の出を待つ。

「顎十郎捕物帳 両国の大鯨」久生十蘭(青空文庫)

末尾部(原文より)

 両国二丁目の角屋敷。  鈴木仁平という浪人者がやっている大弓場。  ひょろ松と顎十郎が、踏みこんで行くと、伏鐘重三郎は、松坂木綿の着物に屑糸織の角帯という、ひどく実直な身なりで長火鉢に鯨鍋をかけ、妾のお沢と一杯飲っていた。  お大名の若殿のような品のいい顔を振りあげて、苦笑いしながら、重三郎、 「仙波さんにかかっちゃかなわねえ」  と、言った。

「顎十郎捕物帳 両国の大鯨」久生十蘭(青空文庫)

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

青空文庫の図書カード

同じ作家の作品

近い作品