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顎十郎捕物帳 御代参の乗物(久生十蘭)のあらすじ・登場人物

木戸うちで消えた十三挺の乗物

  • ミステリ
  • 歴史

久生十蘭 1939年(昭和14年)6月 「奇譚」

文字数
13,999字
読了目安
約28分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

久生十蘭が1939年(昭和14年)から雑誌『奇譚』に六戸部力の名義で連載した「顎十郎捕物帳」の一編。長い顎から「顎十郎」と呼ばれる北町奉行所の仙波阿古十郎と、南町奉行所の名人同心・藤波友衛の対決もの。本編では、寺への代参と芝居見物を終えた紀州家の奥女中の行列から、四谷見附の木戸うちのわずかな道のりで、十三人の腰元が乗物ごと消えてしまう。どの木戸にも通った記録はなく、御三家の醜聞になりかねない騒ぎに、老中は南北の奉行所の双方に探索を命じる。奉行の進退をかけて臨む藤波の必死さも読みどころ。

あらすじ

紀州侯の愛妾・大井の一行が、寺への代参と市村座での芝居見物を終えて上屋敷へ戻る途中、外糀町口の木戸から正門までのわずかな間に、二十二挺の乗物のうち十三挺が腰元ごと消えた。周りの木戸はどこも通っていない。消えた腰元のうち七人は小太刀の名手「那智衆」で、二日後の殿の誕生日には恒例の武芸試合が控えていた。寺ではお祖師様ににらまれたと怯える腰元がおり、芝居小屋では「帰りがこわいぞ」という不気味な声がしたという。南町奉行は藤波友衛に、しくじれば自分は職を退くと告げ、藤波も命をかけると誓う。翌朝、心法寺原で粉々に壊された乗物が見つかり、藤波は先に来ていた顎十郎と鉢合わせする。藤波は、同じ刻限に木戸を通った大名の女乗物の行列に紛れ込ませて連れ去ったと読み、お祖師様の声が佐賀訛りだったと聞いて、鍋島閑叟侯の意趣返しと睨む。陸尺に化けて鍋島屋敷を探り、代参の乗物が出る時は十四挺、帰りは二十四挺だったと聞き出して奉行へ報告書を書くが、駕籠部屋の錠を破ったところを顎十郎と中間たちに捕まり、一晩縛られる。翌朝、千太から、乗物の数の食い違いは別の代参の行列と重なっただけと知らされ、藤波は奉行の屋敷で切腹を覚悟する。ところが奉行は大喜びで帰ってくる。顎十郎は、腰元たちが不浄門から屋敷に入り、大井の局に隠れていると見抜いていた。勝ち目のない武芸試合を芝居に変えたい大井の企みだったのである。顎十郎は藤波の手紙をすり替え、正しい報告を南町に届けさせていたのだった。

登場人物

冒頭部(原文より)

神隠し  もう子刻に近い。  寒々としたひろい書院の、金蒔絵の京行灯をへだてて、南町奉行池田甲斐守と控同心の藤波友衛が、さしうつむいたまま、ひっそりと対坐している。

「顎十郎捕物帳 御代参の乗物」久生十蘭(青空文庫)

末尾部(原文より)

「ところで、藤波というやつの強情には、そうとう磨きがかかっている。まア、これを見ろ」  ひょろ松が、受けとって読んで見ると、救命のご恩義は終生わすれないが、そのためにあなたに屈するようなことはない。この次の機会にまた勝負をしよう。今度こそあなたを叩きのめして見せる、と書いてあった。

「顎十郎捕物帳 御代参の乗物」久生十蘭(青空文庫)

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