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右門捕物帖 南蛮幽霊(佐々木味津三)のあらすじ・登場人物

むっつり右門、花見の怪死に挑む

  • ミステリ
  • 歴史

佐々木味津三 1928年(昭和3年) 「冨士」

文字数
18,001字
読了目安
約36分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

佐々木味津三が1928年(昭和3年)から雑誌「冨士」などに書き継いだ捕物小説「右門捕物帖」全38話の第一話。南町奉行所の同心・近藤右門は、めったに口をきかないことから「むっつり右門」と呼ばれる若者で、おしゃべりな岡っ引き伝六を従えて江戸の難事件に挑む。本編は島原の乱が鎮まった寛永十五年の春、八丁堀の組屋敷の花見の余興で、清正の虎退治の最中に虎役の岡っ引きが本当に死んでいるという騒ぎから幕を開ける。講談調の語り口で、半七と銭形平次のあいだに位置する捕物帳の古典の出発点。

あらすじ

島原の乱が鎮まった寛永十五年の春。八丁堀の組屋敷では年に一度の無礼講の花見が開かれ、呼び物の「清正の虎退治」で、与力の坂上与一郎が清正に、相撲上がりの岡っ引き長助が虎に扮した。ところが清正が妓生を連れて現れる趣向に場内がわくなか、虎の縫いぐるみの長助が本当に死んでいるのが見つかる。坂上与一郎も行方が知れない。その騒ぎへ、畳屋の職人が駆け込んできた。富くじで当てた三百両を、天神下の小料理屋で雲のようなものに包まれて眠らされた隙に盗まれたという。口をきかない変わり者の同心・近藤右門は、これを聞いて目の色を変え、おしゃべりの手下伝六を連れて探索に乗り出す。料理屋に残された将棋の駒の彫り銘「凌英」を手がかりに追うがねたはあがらず、右門は奉行所の古い調書から、長助がかつて関わった旦那ばくちの検挙に疑いを抱く。やがて伝六が、柳原の土手に夜鷹に化けた人さらいが出るといううわさを運んでくる。右門は浅草の南蛮渡りの玉乗りの小屋へ向かい、太夫たちの唐人ことばが花見の妓生の言葉と同じ節であることを確かめると、土手のおでん屋台の美しい娘に目をつける。老学者から催眠の術の破り方を聞き出した右門は、夜の土手で玉に乗って近づく娘を龕燈の光と大喝で破り、取り押さえる。娘の正体は女に化けた美少年で、一味は天草の残党の切支丹だった。宗門一揆の再挙のため、催眠の術を使ったいかさまばくちや人さらいで軍資金と人を集め、賄賂で目こぼしをさせた長助を、坂上親子に化けて芝居の最中に殺したのである。

登場人物

冒頭部(原文より)

1  切支丹騒動として有名なあの島原の乱――肥前の天草で天草四郎たち天主教徒の一味が起こした騒動ですから一名天草の乱ともいいますが、その島原の乱は騒動の性質が普通のとは違っていたので、起きるから終わるまで当時幕府の要路にあった者は大いに頭を悩ました騒動でした。

「右門捕物帖 南蛮幽霊」佐々木味津三(青空文庫)

末尾部(原文より)

 すると右門は即座に自分の耳を指さしたものでしたから、伝六が目をぱちくりしたのは当然。 「見たところへしゃげた耳で、べつに他人のと変わっているようには思えませんが、なにか仕掛けでもありますかい」 「うといやつだな。あのとき小屋の中でもそういったはずだが、お花見のときにきいた妓生の南蛮語だよ。はじめはむろんでたらめなべらべらだなと思っていたが、きさまがおでん屋で芋焼酎を売り物にしているといったあの話から、てっきり南蛮酒だなとにらんだので、南蛮酒から南蛮渡来の玉乗りのことを思いついて、妓生のべらべらをもう一度聞きためしにいったまでのことさ。あの玉乗りの太夫たちが唐人ことばで踊りを踊るということは、まえから聞いていたのでな。ねたを割りゃ、それだけの手がかりさ」  いうと、右門はおれの耳はおまえたちのきくらげ耳とは種が違うぞ、というように、唖然と目をみはっている同僚たちの面前で、ぴんぴんと両耳をひっぱりました。

「右門捕物帖 南蛮幽霊」佐々木味津三(青空文庫)

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