アプリで読む

無料・登録不要

半七捕物帳 広重と河獺(岡本綺堂)のあらすじ・登場人物

屋根の上の亡骸と雨夜の怪

  • ミステリ
  • 歴史

岡本綺堂 1918年(大正7年) 「文芸倶楽部」

文字数
18,179字
読了目安
約36分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

岡本綺堂「半七捕物帳」の第十話で、1918年(大正7年)に「文芸倶楽部」に掲載された。冒頭を芝居の台本のト書きの調子で書き起こし、浅草の仁王門前で出会った半七老人と「わたし」が、葉桜の向島の土手を歩きながら話を聞く趣向をとる。一つ目は安政五年の正月、浅草田町の旗本屋敷の大屋根に、身元の知れない三、四歳の女の子の亡骸が横たわっていた一件。二つ目は弘化四年の秋雨の夜、本所の源森橋のそばで下谷の道具屋の隠居が顔じゅうを傷だらけにされ、大金の入った財布をなくした一件である。題にある浮世絵師歌川広重の名所絵や、向島に出たという河獺など、江戸の風物が謎解きに絡んでくる二話仕立ての一編。

あらすじ

安政五年正月、浅草田町の旗本黒沼孫八の屋敷の大屋根に、三、四歳の女の子の亡骸が横たわっていた。屋敷の誰もその子を知らず、天狗の仕業かと噂されるが、主人は身寄りを探して亡骸を返してやれと命じる。用人の長屋で亡骸を調べた半七は、襟首に鳥か獣のものらしい爪の痕を見つける。帰り道、絵草紙屋で広重の十万坪の雪景色の絵に大きな鷲が描かれているのを見て、子どもは鷲にさらわれたのではと思いつく。子分の庄太を連れて深川の果ての砂村稲荷へ出向くと、掛茶屋の女房から、木場の材木問屋の通い番頭の若い後妻が、前の日に先妻の三つの娘お蝶を八郎兵衛新田の帰りに見失い、夫に疑われて裸足参りを始めたと聞く。半七はすぐ木場へ回って事情を知らせ、亡骸を親もとへ返した。次は弘化四年九月の雨の夜、下谷御成道の道具屋の隠居十右衛門が本所源森橋のそばで何者かに顔を引っかかれ、五十両入りの財布を奪われたと訴え出る。十右衛門は、囲っている瓦町のお元の家で会った従弟と称する政吉を疑わせるような申し立てをする。政吉は帰り道に拾った小判二枚を持っていたため大番屋へ送られるが、まもなく源森橋の川下に、財布の紐を頸に巻きつけた大きな河獺の死骸が浮かぶ。財布には四十両あまりが残っており、十右衛門を襲ったのは河獺で、政吉の無実が明らかになった。十右衛門は、お元と許嫁の政吉への嫉妬から罪をなすりつけようとしていたのだった。十右衛門はその金を手切金としてお元に渡し、お元と政吉は夫婦で礼に来た。

登場人物

冒頭部(原文より)

一  むかしの正本風に書くと、本舞台一面の平ぶたい、正面に朱塗りの仁王門、門のなかに観音境内の遠見、よきところに銀杏の立木、すべて浅草公園仲見世の体よろしく、六区の観世物の鳴物にて幕あく。――と、上手より一人の老人、惣菜の岡田からでも出て来たらしい様子、下手よりも一人の青年出で来たり、門のまえにて双方生き逢い、たがいに挨拶すること宜しくある。

「半七捕物帳 広重と河獺」岡本綺堂(青空文庫)

末尾部(原文より)

「相変らずおしゃべりをしてしまいました。この向島ではまだ、河童や蛇の捕物のお話もありますがね。それは又いつか申し上げましょう。いや、お茶代はわたくしに払わせてください。年寄りに恥をかかしちゃいけない」と、半七老人はふところから鬼更紗の紙入れをとり出して、幾らかの茶代を置いた。  茶屋の娘とわたしとは同時に頭を下げた。 「さあ、まいりましょう。向島もまったく変りましたね」  老人はあたりを眺めながら起ち上がるを木の頭、どこかの工場の汽笛の音にチョンチョン、幕。むかしの芝居にこんな鳴物はない筈である。なるほど向島も変ったに相違ないと思った。

「半七捕物帳 広重と河獺」岡本綺堂(青空文庫)

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

青空文庫の図書カード

同じ作家の作品

近い作品