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顎十郎捕物帳 三人目(久生十蘭)のあらすじ・登場人物

眠るように死んだ女に忍び寄る三人

  • ミステリ
  • 歴史

久生十蘭 1939年(昭和14年)7月 「奇譚」

文字数
13,248字
読了目安
約26分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

久生十蘭が1939年(昭和14年)から雑誌『奇譚』に六戸部力の名義で連載した「顎十郎捕物帳」の一編。長い顎から「顎十郎」と呼ばれる仙波阿古十郎は、北町奉行所の例繰方の見習いながら、叔父の与力の陰で次々に難事件を解いてきた風来坊。本編では、男たちから金を巻き上げてきた清元の師匠・千賀春が、長火鉢にもたれて眠るように死んでいるのが見つかる。医者の見立ては卒中だが、南町奉行所の同心・藤波友衛は殺しと見抜き、顎十郎に挑戦状めいた手紙を送りつける。好敵手二人の知恵比べが本格的に始まる一編。

あらすじ

芝の露月町で、男を手玉に取っては金を巻き上げてきた清元の師匠・千賀春が、撥を手にしたまま長火鉢にもたれて死んでいた。体は桜色で傷もなく、医者は卒中と診る。だが南町の藤波友衛は、撥が左手に握らされていることと、乳房の裏の小さな鍼の痕から殺しと見抜き、左利きの按摩・杉の市が怪しいと睨みながら、さらに裏があると顎十郎へ手紙で知らせる。北町のひょろ松は杉の市を捕らえるが、杉の市は、自分に濡れ衣を着せる者の仕業だと弁じ、恋敵の若旦那・角太郎を名指す。勘当された角太郎は、講談から思いつき、鍼の稽古をして前夜、酔いつぶれた千賀春の乳房の裏に鍼を打ったと白状した。ところが撥は握らせていないという。顎十郎は、あまりに弁の立つ杉の市を怪しみ、早駕籠で日暮里へ向かう棺を追う。調べると盆の窪にも鍼の痕があり、杉の市も同じ夜、角太郎の後に忍び込み、彼に罪を着せるつもりで撥を左手に握らせていた。だが顎十郎は、手の届かない所に置かれた銚子と、灰の中の銀簪から、二人より先に酌をした者がいたと見抜く。現場に戻って来た芸者の小竜を藤波が捕らえるが、小竜が来た時、千賀春はすでに死んでいた。体の桜色は炭火の毒に当たった証しで、千賀春は誰に殺されたのでもなかった。顎十郎はこの勝負を藤波の負けだと言い渡す。

登場人物

冒頭部(原文より)

左きき 「こりゃ、ご書見のところを……」 「ふむ」  書見台から顔をあげると、蒼みわたった、鬢の毛のうすい、鋭い顔をゆっくりとそちらへ向け、

「顎十郎捕物帳 三人目」久生十蘭(青空文庫)

末尾部(原文より)

……炭火毒にあたって死んだ徴はね、身体中が薄桃色になって、これが死んだとは思えないようになっているものなんですぜ。……お役がら、これくらいのことは、ご存じのほうがいいですな、藤波さん……」

「顎十郎捕物帳 三人目」久生十蘭(青空文庫)

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