アプリで読む

無料・登録不要

顎十郎捕物帳 ねずみ(久生十蘭)のあらすじ・登場人物

コレラか毒殺か、白状した手代の謎

  • ミステリ
  • 歴史

久生十蘭 1939年(昭和14年)5月 「奇譚」

文字数
11,527字
読了目安
約23分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

久生十蘭が1939年(昭和14年)から雑誌『奇譚』に六戸部力の名義で連載した「顎十郎捕物帳」の一編。長い顎から「顎十郎」と呼ばれる仙波阿古十郎は、北町奉行所の例繰方の見習いで、大名屋敷の中間部屋に入りびたっては江戸中の噂を耳にしている。本編では、南町奉行所の切れ者同心・藤波友衛が初めて登場し、顎十郎を敵視して呼び出す。事件は、伝馬町の商家・堺屋で主人ら三人がコレラのような症状で急死したもの。手代の忠助が「私が殺した」と白状し、叔父の庄兵衛は手柄顔だが、顎十郎は筋の通らなさに首をかしげる。

あらすじ

南町奉行所の同心・藤波友衛は、江戸で一、二を争う捕物の名人だが、驕慢で気難しい。伝馬町の堺屋で主人嘉兵衛と番頭鶴吉、姉娘の三人が激しい下痢と嘔吐で死んだ一件を、南の手下はコレラと見て引き揚げた。ところが翌月、北町の月番になると、手代の忠助が毒を盛ったと白状し、北町の手柄となる。面目を潰された藤波は、顎十郎の差し金と睨んで手下の千太とともに呼び出し、出過ぎた真似をするなと脅す。だが顎十郎は、二人が気づかぬうちに藤波の帷子の背の紋だけを丸く切り抜き、林に潜んでいた五十人ほどの中間たちがどっと笑う。実は、忠助を責めたのは叔父の庄兵衛とひょろ松だった。忠助は妹娘おさよと恋仲で、死んだ三人は彼にとって邪魔者、生き残ったのは彼が助けたい者ばかり。蛤を食べるなと二人に念を押してもいた。しかし顎十郎は、それほどの悪党が自分に疑いのかかる真似をするはずがないと首を振る。真相は、殺鼠剤「石見銀山鼠とり」を入れた蛤の殻を鼠が棚から蹴落とし、飯炊きが汁用の蛤と間違えて鍋に入れたことだった。この毒はコレラと寸分違わぬ死に方をさせる。罪人は「尻尾の長いチュウ助」というわけで、忠助は、主人たちがいなければと思った罪の意識から白状していたのだった。藤波も堺屋の台所で鼠の通り道を見つけ、同じ結論に達していた。

登場人物

冒頭部(原文より)

藤波友衛  坊主畳を敷いた長二十畳で、部屋のまんなかに大きな囲炉裏が切ってある。磨出しの檜の羽目板に、朱房のついた十手や捕繩がズラリとかかって、なかなか物々しい。

「顎十郎捕物帳 ねずみ」久生十蘭(青空文庫)

末尾部(原文より)

「藤波はせんぶりの千太と堺屋へ出かけて行って、台所の棚に鼠の通い路があるのを見つけて、間もなくおれと同じように詮じつめてしまった。……ふふふ、今度はまず五分五分の勝負かな。……ただ藤波は堺屋へ行き、おれはうちで寝っころがって考えただけのちがいだ」

「顎十郎捕物帳 ねずみ」久生十蘭(青空文庫)

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

青空文庫の図書カード

同じ作家の作品

近い作品