アプリで読む

無料・登録不要

顎十郎捕物帳 蕃拉布(久生十蘭)のあらすじ・登場人物

闇の三分間、舶来の襟巻が絞める

  • ミステリ
  • 歴史

久生十蘭 1939年(昭和14年)11月 「奇譚」

文字数
14,712字
読了目安
約29分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

久生十蘭が1939年(昭和14年)から雑誌『奇譚』に六戸部力の名義で連載した「顎十郎捕物帳」の一編。主人公の仙波阿古十郎は、長い顎から「顎十郎」と呼ばれる北町奉行所の例繰方で、のんびりした物腰とは裏腹に鋭い推理を見せる。本編の舞台は幕末、攘夷の声が渦巻く江戸。西洋好みの「開化五人組」の洋物屋たちが向島の寮に集う夏の夜、遅れて来た仲間が、灯が消えたわずか三分の闇のなかで、首に巻いた舶来の蕃拉布(ハンカチーフ)で絞め殺される。錠のおりた座敷で続く奇怪な死に、顎十郎が挑む。

あらすじ

幕末の夏、向島白髭の長崎屋の寮。開化五人組と呼ばれる洋物屋の主人たちと、横浜交易所の検査役・仁科伊吾が葡萄酒を酌み交わしているところへ、夕立にずぶ濡れになった佐原屋清五郎が遅れて現れる。そのとき川風で蝋燭がすべて消え、灯をともし直すまでのわずか三分のあいだに、佐原屋は首に巻いた蕃拉布で絞め殺されていた。座敷は錠のおりた土扉の奥で、円卓の誰も席を立っていない。一同は攘夷派の威しだと考えるが、翌朝、舟で帰る途中に川へ落ちた佐倉屋までが、水の中で同じように蕃拉布で絞め殺される。屋根を調べさせていた顎十郎は、土砂降りだったのに座敷に濡れた足跡がないことから外からの侵入を否定し、寮の席札に佐原屋・佐倉屋・和泉屋の名が消されているのを見つけて、次は和泉屋だと見抜く。顎十郎は二百人の捕方で蠣殻町を囲ませる一方、残る四人を土蔵に匿うが、それは下手人を油断させるための構えだった。八王子の柚木容斎のもとへ使いを走らせた答えが届いたその時、土蔵の中で和泉屋が絞め殺される。暑さで倒れた和泉屋に盃洗の水をかけたのは日進堂。蕃拉布は水に濡れると強く縮む竜舌蘭の繊維でできており、それを長崎土産として仲間に配ったのが日進堂だった。彼は、かつて長崎で五人組に潰された天草屋の次男で、復讐のために仕組んだのだった。

登場人物

冒頭部(原文より)

   夕立の客 「……向島は夕立の名所だというが、こりゃア、悪いときに降りだした」 「佐原屋は、さぞ難儀していることだろう。……長崎屋さん、ときに、いま何字でございますね」 「はい、ちょうど七字と十ミニュート……」

「顎十郎捕物帳 蕃拉布」久生十蘭(青空文庫)

末尾部(原文より)

「なんて言ったって、もう追いつかない。……あなたが天草屋の一族だったということは、きょう調べが届いたから、復讐のためにこんなことを考え出したのだろうとは、うすうす察していたのですよ。……長崎屋さん、この日進堂は、むかし長崎で、あなたがた五人組につぶされた天草屋の次男だということはご存じなかったと見えますな」

「顎十郎捕物帳 蕃拉布」久生十蘭(青空文庫)

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

青空文庫の図書カード

同じ作家の作品

近い作品