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顎十郎捕物帳 日高川(久生十蘭)のあらすじ・登場人物

欄間を這う金色の大蛇の正体

  • ミステリ
  • 歴史

久生十蘭 1939年(昭和14年)9月 「奇譚」

文字数
11,048字
読了目安
約22分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

久生十蘭が1939年(昭和14年)から雑誌『奇譚』に六戸部力の名義で連載した「顎十郎捕物帳」の一編。主人公の仙波阿古十郎は、長い顎から「顎十郎」と呼ばれる風来坊の捕物名人で、茫洋とした物腰の裏に鋭い推理を秘めている。本編では、手先のひょろ松の法要帰りにつきあって武蔵野の小金井へ足をのばした顎十郎が、ひょろ松の叔父である名主から、娘が蛇を殺した祟りで物狂いになり、欄間に金色の大蛇まで現れるという相談を受ける。田舎の怪異譚を、顎十郎の軽口と理詰めの推理が解きほぐしていく。

あらすじ

秋、ひょろ松は亡父の七回忌のため、顎十郎を誘って郷里の小金井へ帰る。宿に訪ねてきた叔父の名主・川崎又右衛門は、一人娘のお小夜が春に山棟蛇を石で殺して以来、高熱に浮かされて蛇の幻に怯え、日に日に痩せ衰えていると打ち明ける。山伏の覚念坊は蛇姫の眷族三百三十三匹の祟りだといい、又右衛門自身も昼の八ツごろ、欄間を這う金色の大蛇を三度も見たという。顎十郎は、大蛇を消したという蛇よけの呪文が「南の塚の穴の蛇の中に糞がある」という出鱈目な文句にすぎないことを笑い飛ばす。翌日、離家で張り込んだ二人の前で、顎十郎が手洗鉢の蓋を取ると、腰壁の朽穴から欄間へ光がさし、蓋をすると消える。顎十郎はひょろ松に何事かをささやく。四日後、名主の家で八王子名物の「写し絵」の興行が開かれ、『道成寺』の日高川の場で清姫が金の鱗の蛇体に変わったあと、画面には離家の節穴に種板を当てて笑う男と、欄間を這う蛇の姿が映し出される。庭の闇から逃げ出したのは、実直そうな下男頭の作平だった。作平はもと写し絵の種板絵描きで、手洗鉢の水に映る日の光を節穴から欄間に通し、大蛇の絵を映していたのである。お小夜を責め殺して作平に家を継がせ、自分がその女房に収まろうと企み、覚念坊まで引き込んだのは女中のお年だった。

登場人物

冒頭部(原文より)

   金の鱗  看月も、あと二三日。  小春日に背中を暖めながら、軽口をたたきたたき、五日市街道の関宿の近くをのそのそと道中をするふたり連れ。ひょろ松と顎十郎。

「顎十郎捕物帳 日高川」久生十蘭(青空文庫)

末尾部(原文より)

「いやア、まあ、そう、おだてるな。……それにしても、太いのは、お年という女。……作平をそそのかしたのも、覚念坊をひっぱりこんだのも、みなあいつの才覚だったんだが、あんなしおらしい顔をして蛇を種に主人の娘を責め殺し、蛇姫様のお告げだといって、作平に家督をつがせ、じぶんがその女房におさまってうまうまお家を乗っとろうなどと企てるなんてえのは見あげた度胸。……ふ、ふ、ふ、たしかに女は魔物だよ」

「顎十郎捕物帳 日高川」久生十蘭(青空文庫)

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