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顎十郎捕物帳 鎌いたち(久生十蘭)のあらすじ・登場人物

鎌形の傷を残す見えない殺し屋

  • ミステリ
  • 歴史

久生十蘭 1939年(昭和14年)3月 「奇譚」

文字数
10,783字
読了目安
約22分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

久生十蘭が1939年(昭和14年)から雑誌『奇譚』に六戸部力の名義で連載した「顎十郎捕物帳」の一編。長い顎から「顎十郎」と呼ばれる仙波阿古十郎は、北町奉行所の例繰方の見習いで、古い捕物控を読みちらして暮らす風来坊。本編では、江戸の市中で一日おきに五人が、左の耳の後ろから咽喉へ鎌のような形に斬られて死ぬ。金品は手つかずで、人間業とは思えない傷に、叔父の与力・庄兵衛は妖怪「かまいたち」の仕業と書物と首っぴき。そこへ顎十郎が釣竿をかついで現れ、皆を鉄炮洲の青鱚釣りへ誘い出す。

あらすじ

顎十郎は神田の釣道具屋で、能書きの長い番頭から青鱚釣りの講釈を聞き、一文の鱚鈎を見せてそれと同じものを買い揃える。そのころ江戸では、一日おきに五人が咽喉を鎌形に深く斬られて死んでいた。傷は耳の後ろから咽喉仏へ向かって深くなって刎ね上がり、その手前にはきまって切っ先が戦いだような小さな掻き傷がある。持ち物は何ひとつ盗られておらず、人の業とは思えない傷に、叔父の庄兵衛は『倭訓栞』を広げて妖怪かまいたちの仕業だと唸っている。顎十郎は釣竿をかついで叔父の屋敷に現れ、庄兵衛と御用聞のひょろ松を鉄炮洲の釣り場へ連れ出す。叔父が釣りに夢中になる間、顎十郎は渚を駆け回って釣り人を見て回り、やがてひょろ松に、自分が釣りたいのは「鎌いたち」だと明かす。指さした先には、左手で一本竹の延竿をのべる凄味のある侍がいた。魚がかかると、侍の竿先は虚空に新月を描き、鱚は自然に魚籠へ飛び込む。その竿さばきこそ咽喉の傷の正体だった。顎十郎は、相手は手練の左利きだから右へは回るなと言い置いて帰り、侍・明石新之丞はその夜捕らえられる。顎十郎は後で花世に、殺された侍の頭上の松の枝に掛かっていた鱚鈎から、剣の極意を釣りに移した流派にたどり着いたいきさつを明かす。

登場人物

冒頭部(原文より)

魚釣談義  神田小川町『川崎』という釣道具屋。欅の大きな庇看板に釣鈎と河豚を面白い図柄に彫りつけてあるので、ひとくちに、神田の小河豚屋で通る老舗。

「顎十郎捕物帳 鎌いたち」久生十蘭(青空文庫)

末尾部(原文より)

……渚をうろうろして眺めていると、すごんだ面のさむらいが、左の手に一本竹の延竿をもって魚を釣っている。もう、これだけだって、はなしの落はついているのだ。……どれ、これから叔父貴のところへ行って、小遣にありついてくべいか」

「顎十郎捕物帳 鎌いたち」久生十蘭(青空文庫)

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

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