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顎十郎捕物帳 咸臨丸受取(久生十蘭)のあらすじ・登場人物

大黒様の刷物に隠された暗号

  • ミステリ
  • 歴史

久生十蘭 1939年(昭和14年)4月 「奇譚」

文字数
9,707字
読了目安
約19分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

久生十蘭が1939年(昭和14年)から雑誌『奇譚』に六戸部力の名義で連載した「顎十郎捕物帳」の一編。長い顎から「顎十郎」と呼ばれる北町奉行所の仙波阿古十郎は、強情な叔父の与力・森川庄兵衛の陰で事件を解いてきた風来坊。本編では、どういうわけか江戸の市中から掏摸も空巣もぴたりと消え、奉行所は手持ち無沙汰になる。南町の藤波友衛は何かをつかんだらしく動き出し、焦った叔父は御用聞のひょろ松に酒を持たせ、顎十郎の知恵を借りにやる。幕末の世相と、流行の縁起刷物に隠された暗号を組み合わせた一編。

あらすじ

隅田川の屋根舟で、下戸のひょろ松が顎十郎にやけに酒を勧める。叔父の庄兵衛に頼まれてきたのを見抜かれたひょろ松は、この十日ほど江戸から掏摸も空巣も詐欺もぴたりと絶えたと打ち明ける。顎十郎は、まもなく途方もないことが起こると言う。叔父の屋敷を訪ねると、庄兵衛は御法度の大黒天の縁起刷物の版木を、娘の花世のためにこっそり彫っていた。顎十郎はその大黒像に、白と黒の丸を並べた奇妙な印がついていることに気づく。三日間姿を消した顎十郎は、ひょろ松の前に現れて別の大黒絵を見せる。肩には矢羽根が見え、鼠はいつもの二匹ではなく四匹いた。南町の藤波友衛は大勢の手下を化けさせて、弥太堀の大黒堂を取り囲んでいた。顎十郎は堀の向かい岸へ回り、料理屋「大黒屋」の向かいの水茶屋に陣取る。江戸の悪党が消えたのは、幕府が買い入れた軍艦・咸臨丸の代金二十五万両が長崎へ運ばれる東海道に散ったためだった。丸の並びは尺八の古い一種・一節切の譜で、五つずつ区切ると「ヒルヤツヤタホリ」、すなわち昼の未の刻に弥太堀と読めた。四匹の鼠は子の日の四日を示し、大黒絵そのものが大黒屋を指していた。ひょろ松が捕り手を呼びに走り、大黒屋に集まって金を追おうとしていた勤王くずれの強盗の頭目十人は、出立の寸前で一網打尽となる。

登場人物

冒頭部(原文より)

川風 「阿古十郎さん、まア、もうひとつ召しあがれ」 「ごうせいに、とりもつの」 「へへへ」

「顎十郎捕物帳 咸臨丸受取」久生十蘭(青空文庫)

末尾部(原文より)

弥太堀の大黒屋に集っていたのは、一団の主領かぶで、栗田口新之丞、石丸茂平、佐田長久郎、杉村友太郎、山谷勘兵衛、以下十名、いずれも勤王くずれの無頼漢。  勤王を名にして、木曽路や東海道で強盗をはたらいていた連中。咸臨丸の金、二十五万両が東海道をくだることを聞きこみ、江戸の悪者どもをかりあつめて海道に配置し、自分らはここで勢揃いをし、用金の後を追って、まさに発足しようとしている危どいところだった。

「顎十郎捕物帳 咸臨丸受取」久生十蘭(青空文庫)

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