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顎十郎捕物帳 金鳳釵(久生十蘭)のあらすじ・登場人物

怪談「金鳳釵」をなぞる縁談

  • ミステリ
  • 歴史

久生十蘭 1940年(昭和15年)6月 「奇譚」

文字数
13,406字
読了目安
約27分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

久生十蘭が1939年(昭和14年)から雑誌『奇譚』に六戸部力の名義で連載した「顎十郎捕物帳」の一編。長い顎から「顎十郎」と呼ばれる仙波阿古十郎は、もと江戸一の捕物名人で、いまは相棒のとど助と駕籠舁き暮らし。本編では、深川木場の大富豪・万屋の家で起きた、亡き許婚の霊が妹の体を借りて契るという怪談めいた縁談が持ち込まれる。顎十郎はすぐに、それが明代の怪異小説集『剪燈新話』の一話「金鳳釵」そのままの筋立てだと見抜く。古典の怪談を下敷きにした、手の込んだ趣向の一編である。

あらすじ

長雨の夕方、ひょろ松が酒を提げて顎十郎ととど助の長屋を訪れ、深川木場の大物持ち・万屋和助の家の奇妙な話をする。万和の姉娘お梅は、幼いころ許婚と決めた山崎屋の金三郎が唐へ渡ったまま帰らず、恋い焦がれて死に、許婚のしるしの鳳凰の金簪とともに葬られた。その直後に金三郎が帰ってくる。盆の夕べ、金三郎は駕籠が落とした金簪を拾い、その夜から病床にあるはずの妹お米が忍んでくるようになる。やがてお米の口からお梅の霊が語り、二人を夫婦にしてほしいと願ったので、明晩祝言を挙げるのだという。顎十郎はそれが『剪燈新話』の「金鳳釵」の筋そのままだと笑うが、話が本当と知って顔色を変える。そこへ末娘の利江が訪ねてきて、病からよみがえって以来、姉のお米が別人のようだと訴える。顎十郎は、お梅の墓が数か月前に暴かれていたこと、八間堀に上がった首なし女の死骸が投込場から盗まれていたことを確かめ、本物のお米はすでに殺されたと悟る。お米が息を引き取ったと騒いだ夜、一味は葬具屋より先に偽の棺を土蔵へ運び込み、同類の小間使いの手を借りて、棺に潜んだ替え玉と本物をすり替えていたのだ。婚礼の夜、盃事の最中に、庭先に水に濡れた首のない女の幽霊が立つ。花嫁は「ふざけるない」と叫んで正体を現す。金三郎を名乗っていたのは、本物の金三郎を廈門で殺してなりすました海賊・梅花の新吉で、花嫁はお米に生き写しの陜西お蓮、親類と称した二人も海賊船の船頭だった。

登場人物

冒頭部(原文より)

   花婿  二十四日の亀戸天神様のお祭の夜からふりだした雨が、三十一日になっても降りやまない。

「顎十郎捕物帳 金鳳釵」久生十蘭(青空文庫)

末尾部(原文より)

 と、座敷のまんなかにごろりと大の字に寝っころがった。  安政の末ごろから、台州、福州を股にかけ沿岸の支那の漁村を荒らしまわっていた梅花の新吉の一味。親類づらをした二人は、老大の権六、忘八の猪太郎という海賊船の船頭だった。

「顎十郎捕物帳 金鳳釵」久生十蘭(青空文庫)

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