アプリで読む

無料・登録不要

顎十郎捕物帳 都鳥(久生十蘭)のあらすじ・登場人物

馬の尻尾と帯の都鳥、謎の三題噺

  • ミステリ
  • 歴史

久生十蘭 1939年(昭和14年)2月 「奇譚」

文字数
13,576字
読了目安
約27分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

久生十蘭が1939年(昭和14年)から雑誌『奇譚』に六戸部力の名義で連載した「顎十郎捕物帳」の一編。長い顎から「顎十郎」と呼ばれる仙波阿古十郎は、北町奉行所の例繰方の見習いながら、長屋の二階で古い捕物帳を読んで寝転がっている。本編では、江戸中の大名屋敷の馬の尻尾を切って回った男が、古歌をもじった奇妙な辞世を残して腹を切る。同じころ流行の舶来の帯地「呉絽」に小さな都鳥の織り出しが見つかり、鎌倉河岸には身元の知れない比丘尼の死体が浮かぶ。ばらばらの出来事を三題噺のように結んでいく一編。

あらすじ

雛祭りの前日、御用聞のひょろ松が顎十郎に、江戸中の大名屋敷で五十七匹もの馬の尻尾を切った西丸の馬乗役・渡辺利右衛門が、辞世を残して腹を切り、事件は落着したと話す。だが顎十郎は、馬内侍の古歌を一字変えたその辞世に引っかかり、まだ始まったばかりだと言う。叔父の屋敷で従妹の花世が京橋の長崎屋から舶来の帯地「呉絽」を選んでいると、顎十郎は帯の端に、斜めに透かすと見える小さな都鳥の織り出しを見つける。花世の友達お琴の帯にも同じ都鳥があった。翌日、鎌倉河岸に身元不明の比丘尼の死体が上がる。顎十郎は叔父の庄兵衛をわざと怒らせて帰らせ、ひょろ松に謎を解いてみせる。呉絽は羊や駱駝の毛で織るはずなのに、日本で偽造するなら馬の尻尾と女の髪を使うしかない。都鳥は隅田川の千鳥ガ淵、水を飲んでいない死体の草履の魚の鱗と手の筬胼胝は、舟で運ばれた機織り女であることを示していた。その夜、尼寺の床下の穴蔵で、髪を剃られた三十人ほどの女たちが呉絽を織らされているのが見つかる。長崎屋は一味ともども姿を消していた。質屋の川勝屋に預けられた着物の衿からは利右衛門の本当の遺書が出て、妹お小夜を救おうと騒ぎを起こした事情が明らかになる。都鳥を織り込んだのも、殺されて河岸に捨てられたのも、そのお小夜だった。

登場人物

冒頭部(原文より)

馬の尻尾 「はて、いい天気だの」  紙魚くいだらけの古帳面を、部屋いっぱいにとりちらしたなかで、乾割れた、蠅のくそだらけの床柱に凭れ、ふところから手の先だけを出し、馬鹿長い顎の先をつまみながら、のんびりと空を見あげている。

「顎十郎捕物帳 都鳥」久生十蘭(青空文庫)

末尾部(原文より)

長崎屋は、金助町で、顎十郎たち三人の素振に気がつき、隣で立聴きして露見が近づいたことを覚り、邸を出ると飛んで帰って一味を逃がし、利右衛門への仕返しにお小夜を殺して鎌倉河岸へ投げこんだのだった。  女どもの話で、あの優雅な『都鳥』で、自分たちの悲しい織場の所在を知らせようとした智慧のある娘は、利右衛門の妹のお小夜だったということがわかった。

「顎十郎捕物帳 都鳥」久生十蘭(青空文庫)

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

青空文庫の図書カード

同じ作家の作品

近い作品