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顎十郎捕物帳 猫眼の男(久生十蘭)のあらすじ・登場人物

暗闇祭の闇を射抜く矢

  • ミステリ
  • 歴史

久生十蘭 1940年(昭和15年)2月 「奇譚」

文字数
11,768字
読了目安
約24分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

久生十蘭が1939年(昭和14年)から雑誌『奇譚』に六戸部力の名義で連載した「顎十郎捕物帳」の一編。長い顎から「顎十郎」と呼ばれる仙波阿古十郎は、もと江戸一の捕物名人で、いまは相棒のとど助と辻駕籠を担いでいる。本編は、町じゅうの灯を消した真っ暗闇のなかを神輿が渡る、武蔵府中・六所明神の「暗闇祭」が舞台。祭の夜に一家を皆殺しにすると息巻く暴れ者がいるという訴えを受けて府中へ急ぐひょろ松を、顎十郎たちがおんぼろ駕籠に乗せて甲州街道をひた走る。闇の神事のなかで起こる不可思議な殺人に挑む一編である。

あらすじ

五月五日、府中六所明神の暗闇祭の日。御用聞きのひょろ松は、甲州街道の駕籠立場で、駕籠屋になった顎十郎ととど助に捕まり、無理やりおんぼろ駕籠で府中へ運ばれる。道々聞けば、府中の物産廻送問屋・近江屋の姉娘お源が青梅屋の新七と婚約したところ、去年の暗闇祭でお源の銀簪を抜き取ったという暴れ者の勤番くずれ・桜場清六が横恋慕し、祭の日に一家を皆殺しにすると息巻いているという。真夜中に府中へ着いた一行は見張りにつくが、町じゅうの灯を消した真の闇のなか、お渡御の道筋で近江屋鉄五郎、お源、お沢、新七の四人が、いずれも盆の窪をお神矢で射抜かれて倒れていた。土地の顔役・二引藤右衛門は、生まれつき夜目のきく「猫眼」と呼ばれる近江屋の甥・黒木屋五造が、御物の弓を持って行列に加わっていたと明かす。五造は、自分の胡の矢が減っているのは誰かに盗まれたからで、近江屋の四人の襟もとが闇のなかでぼうっと光っていたと語る。土蔵の暗闇で確かめると、四人の水干の襟には、目印として光る烏賊の腸汁が塗られていた。顎十郎はここで五造を縛らせる。暗がりでも黄昏ほどに見える猫眼に、闇でしか見えない烏賊の光が見えたはずはない。近江屋の身代を狙った五造は、桜場に罪を着せるため、わざと自分の矢を使い、余計なことを語って墓穴を掘ったのだった。

登場人物

冒頭部(原文より)

   府中 「……すみませんねえ。これじゃ冥利につきるようで身体がちぢみます」 「やかましい、黙って乗っておれというのに」

「顎十郎捕物帳 猫眼の男」久生十蘭(青空文庫)

末尾部(原文より)

「妙な面をするな。こんど生れ変るときはもっと舌を短かくして貰って来い。桜場に引っかけて、たいそうなことを企らんだが、気の毒だが桜場は御渡御の前に近江屋一家のそばへも寄っちゃいないのだ。すったもんだと言うなら、おめえの手を嗅いでみようか。烏賊腸の臭いでさぞ生臭せえこったろう」

「顎十郎捕物帳 猫眼の男」久生十蘭(青空文庫)

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

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