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顎十郎捕物帳 丹頂の鶴(久生十蘭)のあらすじ・登場人物

将軍の御前で競う捕物の名推理

  • ミステリ
  • 歴史

久生十蘭 1939年(昭和14年)8月 「奇譚」

文字数
13,040字
読了目安
約26分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

久生十蘭が1939年(昭和14年)から雑誌『奇譚』に六戸部力の名義で連載した「顎十郎捕物帳」の一編。長い顎から「顎十郎」と呼ばれる北町奉行所の仙波阿古十郎と、南町奉行所の切れ者同心・藤波友衛は、いまや「南に藤波、北に仙波」と並び称される好敵手。本編では、将軍が寵愛する丹頂の鶴「瑞陽」が、鷹狩の「鶴御成」の前日、小松川の御飼場で胸に二の字の傷を負って死んでいた。老中の計らいで、二人は将軍の御前で死因を論じ合う前代未聞の「捕物吟味の御前試合」に臨むことになる。

あらすじ

将軍の鷹狩「鶴御成」の前日、将軍が手ずから飼って寵愛していた丹頂の鶴「瑞陽」が、小松川の御飼場の水に浮かんで死んでいた。胸の心臓の真上に、二の字の形の深い傷がある。老中阿部伊勢守は、南北の奉行に、藤波友衛と仙波阿古十郎の二人を翌日の鷹狩の後、将軍の御前で鶴の死因を吟味させ、論じ合わせると告げる。ところが顎十郎は数日前に利根川筋へ寒鮒釣りに出たきり行方知れず。北町は大騒ぎになり、勝負に命をかける藤波は下調べを断り、自ら早駕籠と早船で夜通し探し回る。その顎十郎は小松川に近い中川の岸で釣りをしながら、身投げしかけた貧しい老人を慰めていた。老人は、弓の名手でありながら御飼場の下飼人に身を落とし、病の両親と四人の子を養う息子・伝四郎の身の上を嘆いていた。夜明けに藤波に見つかった顎十郎は、鷹匠の装束で御前試合に臨む。藤波は、傷は伴流の手突水矢の二字切の鏃によるものと見抜き、何者かが鶴の餌の精米を盗んで粗末な餌にすり替え、衰弱を隠すために水蛭の咬み傷に見せかけて殺したのだと論じて喝采を浴びる。だが顎十郎は、餌を盗む者などいない、二千年を経た白鶴が自らの嘴で胸を突き、将軍に齢を譲ったのだととぼけて言い張る。下座の下飼人の中から泣き伏す者がいた。将軍は二人をともに褒め、吟味はそこで打ち切られた。

登場人物

冒頭部(原文より)

二の字の傷  恒例の鶴御成は、いよいよ明日にせまったので、月番、北町奉行永井播磨守が、城内西の溜で南町奉行池田甲斐守と道中警備の打ちあわせをしているところへ、 「阿部さまが、至急のお召し」  と、お茶坊主が迎えに来た。

「顎十郎捕物帳 丹頂の鶴」久生十蘭(青空文庫)

末尾部(原文より)

阿部伊勢守が、おお、と立ちあがる。それとほとんど同時に、将軍は床几の上でサラリと白扇をひろげ、感悦ななめならぬ面もちで、 「いずれも、あっぱれなるいたし方、ほめとらする。『瑞陽』の吟味は、もはやこれまで。両人ともどもに褒美をとらせよ。いや、めでたいの」

「顎十郎捕物帳 丹頂の鶴」久生十蘭(青空文庫)

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