秋(芥川龍之介)のあらすじ・登場人物
恋を妹に譲った姉の諦念
- 恋愛
- 心理
- 文字数
- 11,077字
- 読了目安
- 約22分
- 表記
- 新字旧仮名
- 種別
- 小説
この作品について
芥川が現代の女性の心理を初めて本格的に描いた、静かな哀愁のただよう短編。才媛と謳われた信子が、ひそかに愛していた従兄の俊吉を妹の照子に譲り、平凡な男と結婚する。やがて妹夫婦を訪ねた信子は、諦めたはずの恋心と、姉妹のあいだに生じた微妙なわだかまりに向き合うことになる。派手な事件を排し、抑えた筆致で女心の機微と諦念を掬い取った作品で、芥川の作風の幅を示す一編として評価される。
あらすじ
女子大学で才媛と名を馳せた信子は、将来を嘱望される作家志望の娘だった。彼女は従兄で同じく文学を志す俊吉と親しく、互いに惹かれ合っていたが、妹の照子もまた俊吉に想いを寄せていることに気づく。信子は自らの恋心を胸の奥に封じ、妹に俊吉を譲るかのように、ある平凡な会社員との縁談を受け入れて結婚し、夫の転勤に従って遠い土地へと移り住む。やがて俊吉と結ばれた照子夫婦のもとを訪ねた信子は、妹の幸福そうな様子を目にしながらも、諦めたはずの想いと、姉妹の間に生まれた埋めがたい隔たりを痛感する。滞在を切り上げ、幌俥に揺られて帰路につく信子は、偶然すれ違う俊吉の姿を認めながらも声をかけられず、そのまま行き過ぎてしまう。「秋——」と胸の内でつぶやきながら、彼女は身にしみる寂しさと諦念とを、深く噛みしめるのだった。
登場人物
- 信子 才媛と謳われた女性。愛する従兄を妹に譲り、平凡な結婚を選ぶ
- 俊吉 信子の従兄で作家志望の青年。のちに照子と結ばれる
- 照子 信子の妹。俊吉に想いを寄せる
冒頭部(原文より)
信子は女子大学にゐた時から、才媛の名声を担つてゐた。彼女が早晩作家として文壇に打つて出る事は、殆誰も疑はなかつた。
「秋」芥川龍之介(青空文庫)
末尾部(原文より)
「秋――」信子はうすら寒い幌の下に、全身で寂しさを感じながら、しみじみかう思はずにゐられなかつた。
「秋」芥川龍之介(青空文庫)
原文を読む
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