闇中問答(芥川龍之介)のあらすじ・登場人物
「或声」と僕の対話
- 心理
- 文字数
- 6,176字
- 読了目安
- 約12分
- 表記
- 新字旧仮名
- 種別
- 小説
この作品について
「或声」と「僕」との対話だけで進む、芥川最晩年の遺稿。声は容赦なく僕の偽善と虚栄と怯懦を暴き立て、僕はときに反論し、ときに黙り込む。自死の直前に書かれた自己審問の記録として読み継がれてきた。
あらすじ
「お前は俺の思惑とは全然違つた人間だつた」——闇の中の或声はそう切り出す。それは僕の責任ではない、と僕は答える。しかしお前はその誤解にお前自身も協力している、と声は畳みかける。以後、対話は容赦なく進んでゆく。声は僕の書いたもの、僕の生活、僕の家族への態度、僕の名声への未練を一つずつ取り上げ、その底にある虚栄と怯懦と偽善を暴き立てる。僕は反論し、言い訳し、開き直り、ときには沈黙する。……やりとりのなかで問題になるのは、芸術と生活のどちらを取るのか、才能の限界を認めるのか、そして「群小作家の一人」であることに安んじられるのか、という点である。僕はついに、自分は群小作家の一人であり、また群小作家の一人になりたいと思っている、平和はその外に得られるものではない、と言う。ただしペンを持っている時にはお前の俘になるかもしれない、とも。声は「ではいつも気をつけてゐろよ。第一俺はお前の言葉を一々実行に移すかも知れない」と言い残し、いつかまた会いに来ると告げて去る。一人残された僕は、自分の名を呼びかけながら、しっかり踏んばっていろ、それはお前自身のため、同時にお前の子供たちのためだと言い聞かせる。
登場人物
- 僕 問い詰められる作者自身
- 或声 闇の中から僕を審問する声
冒頭部(原文より)
一 或声 お前は俺の思惑とは全然違つた人間だつた。 僕 それは僕の責任ではない。 或声 しかしお前はその誤解にお前自身も協力してゐる。
「闇中問答」芥川龍之介(青空文庫)
末尾部(原文より)
僕 (一人になる。)芥川龍之介! 芥川龍之介、お前の根をしつかりとおろせ。お前は風に吹かれてゐる葦だ。空模様はいつ何時変るかも知れない。唯しつかり踏んばつてゐろ。それはお前自身の為だ。同時に又お前の子供たちの為だ。うぬ惚れるな。同時に卑屈にもなるな。これからお前はやり直すのだ。 (昭和二年、遺稿)
「闇中問答」芥川龍之介(青空文庫)
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