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玉の輿(正宗白鳥)のあらすじ・登場人物

幼なじみの玉の輿に揺れる母心

  • 心理
  • 家族

正宗白鳥 1927年(昭和2年)12月 「女性」

文字数
3,694字
読了目安
約7分
表記
旧字旧仮名
種別
小説
舞台
  • 神奈川県

この作品について

1927年(昭和2年)12月、『女性』に発表された正宗白鳥の短編。数十年来の別荘地として知られる海辺の町で、五人の子を抱えてよく働くおたまの一家を描く。季節外れの寒い朝、共同井戸の周りで、娘のお辰と同い年の幼なじみおよねが、大磯に別荘を持つ男爵家の東京の本宅で小間使奉公をするうち、出入りの商人に見初められたという噂が持ち上がる。土地の娘たちが別荘へ奉公に出る習わしや、そこから生まれた出世話が語られ、噂は日ごとに尾鰭をつけて町を巡っていく。井戸端の口さがない会話と家族の食卓のやりとりを通して、働き者の母親の胸に起こる波立ちと、土地に根ざした暮らしの感触を追った作品だ。

あらすじ

時節外れの寒い朝、働き者のおたまは共同井戸で、およねが東京の松本男爵邸で小間使奉公をするうち出入りの商人に見初められ、結婚が決まったという噂を聞く。別荘地のこの土地では、娘を別荘へ奉公に出し、それが縁で富家と縁組する例もあった。おたまの長女お辰はおよねと同い年の二十歳で、夫婦は娘を手元から離さずにきたが、噂は日に日に膨らみ、千円の支度金、華族にも負けない衣裳と語られて、おたまは奇妙な夢にうなされるようになる。ある晩、東京へ奉公に出る気はないかと問うと、お辰は奉公はいやだが学校なら行きたい、英語やピアノを習いたいと答え、夫の定吉は高望みを戒める。おたまは娘を不憫に思うが、話はそれきりになった。十一月の末、およねが結婚の支度に里帰りし、見違えるような装いで土産を配りに来る。おたまは心から祝いの言葉を述べ、お辰もにこにこと挨拶したが、幼なじみにももう打ち解けた口はきけなかった。それからも母と娘は例のごとくせっせと働き、東京行きの空望みは二人の心をさほど動かさなくなった。

登場人物

冒頭部(原文より)

 時節外れの寒い風が吹いた。五人もの子供を抱へてゐながらビクともしない働きものゝおたまは、薄明りが差すと、誰れもまだ起きない前に寢床を離れて、手早く衣服を着替へて、藁草履を突掛けて、裏木戸から水汲みに出掛けた。

「玉の輿」正宗白鳥(青空文庫)

末尾部(原文より)

 それから、おたまは例の如くせつせと働いて、お辰は例の如く母親の手傳ひをしてせつせと働いた。……東京行の空望みは、彼女等の心をさして動かさなくなつた。

「玉の輿」正宗白鳥(青空文庫)

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