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玄鶴山房(芥川龍之介)のあらすじ・登場人物

死の床を囲む家族という地獄

  • 心理
  • 家族

芥川龍之介 1927年(昭和2年)1月 「中央公論」

文字数
12,368字
読了目安
約25分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

芥川晩年の暗鬱な傑作で、死にゆく老人を囲む一家の陰惨な人間模様を描く。肺結核で床に就く老画家・堀越玄鶴の家に、かつての妾お芳が息子を連れて看護に入り込み、玄鶴の妻や娘、婿らのあいだに憎悪と嫉妬、偽善が渦を巻く。病苦と死の影のもと、家族という名の地獄を突き放した筆致で凝視した作品で、作者自身の絶望と重ね合わせて読まれることも多い、後期を代表する一編である。

あらすじ

郊外の瀟洒な屋敷「玄鶴山房」の主・堀越玄鶴は、肺結核で死の床にある。この家には、かつて玄鶴の妾であったお芳が、病人の看護という名目で、幼い息子の武夫を連れて住み込んでいる。玄鶴の妻お鳥は中風で寝たきり、婿の重吉は勤め人、娘のお鈴は神経を尖らせ、忠実を装う看護婦の甲野もそれぞれに打算を隠している。妾と本妻、娘と妾の子——複雑にもつれた関係のなかで、家じゅうに陰湿な憎しみと偽善が澱のように溜まっていく。玄鶴は苦しい息の下で過去の罪や情事を思い返し、いっそ早く死んでしまいたいと願うばかりである。やがて玄鶴は息を引き取り、一家は形ばかりの葬儀を営む。火葬場からの帰り道、行き場を失ったお芳母子の姿を目にした重吉は、冷ややかにそれを見やると、社会主義者リープクネヒトの書物へと、再び黙って目を落とすのだった。

登場人物

冒頭部(原文より)

それは小ぢんまりと出来上った、奥床しい門構えの家だった。尤もこの界隈にはこう云う家も珍しくはなかった。が、「玄鶴山房」の額や塀越しに見える庭木などはどの家よりも数奇を凝らしていた。

「玄鶴山房」芥川龍之介(青空文庫)

末尾部(原文より)

彼の従弟は黙っていた。が、彼の想像は上総の或海岸の漁師町を描いていた。それからその漁師町に住まなければならぬお芳親子も。――彼は急に険しい顔をし、いつかさしはじめた日の光の中にもう一度リイプクネヒトを読みはじめた。

「玄鶴山房」芥川龍之介(青空文庫)

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