安吾下田外史(坂口安吾)のあらすじ・登場人物
ハリスとお吉の側から
- 歴史
- 文字数
- 2,589字
- 読了目安
- 約5分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 随筆
- 舞台
- 静岡県
この作品について
1954年(昭和29年)5月、「歌劇・黒船」に載った短い歴史随筆。初代米国総領事ハリスの下田上陸から、通訳ヒュースケン、唐人お吉の逸話までを手際よくたどる。ハリスを野心と孤独を抱えた商人出身の紳士として描き、お吉の物語はハリスの側からも書かれるべきだと提案する。
あらすじ
ハリスが通訳のヒュースケンを連れて下田に上陸したのは1856年9月で、下田が選ばれたのは、江戸から不便な土地に外国人を置きたい幕府の意向による。ハリスは外交官ではなく東洋を股にかけた商人で、酒もバクチもやらず、一生独身だった。自分から初代領事を志願し、孤独の中で日本の開国に名を残そうとする野心があった。日本側にはその人柄が理解されず、交渉は進まない。病気のハリスが看護婦を求めたところ、ヒュースケンは自分の妾も求め、ハリスにはお吉、ヒュースケンにはお福があてがわれた。お吉は妾のつもりで来て、三日で宿に返される。のちヒュースケンが攘夷浪士に殺されても、ハリスは日本を武力で屈服させようとする他国公使に一人反対した。安吾は、ハリスが情を抑えた人物であることから、お吉の物語もハリスの側から書かれる必要があると結ぶ。
冒頭部(原文より)
ハリスが通訳ヒュースケンを従え米国総領事の資格で下田に上陸したのは一八五六年九月三日(日本暦では八月五日)のことだ。なぜ下田に上陸したかというと、前にペルリが日本と薪炭条約を結んだ際、もしも後日両国合意の上領事を置くような場合には下田におくという取りきめがあったからである。
「安吾下田外史」坂口安吾(青空文庫)
末尾部(原文より)
自分の野心や抱負のために、かくも畏しく人情を押えることのできたハリスは、お吉や女色に対しても情を押え得た人物であったろうことは想像できるのである。ハリスは甚だ個性的な独特の冒険児であり紳士であった。唐人お吉の物語はハリスの側からも書かれる必要があるだろう。その方がむしろ文学的興味をそそるもののように私は考えている。
「安吾下田外史」坂口安吾(青空文庫)
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