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月の松山(山本周五郎)のあらすじ・登場人物

死を前にした男の最期の願い

  • 歴史
  • 心理

山本周五郎 1954年(昭和29年)8月 「キング」

文字数
20,459字
読了目安
約41分
表記
新字新仮名
種別
小説

この作品について

山本周五郎が1954年(昭和29年)、「キング」に発表した時代小説。医者から不治の病を告げられた男・宗城孝也が、残された日々をどう過ごすかを、月の松山を背景に、しみじみと描いた一編である。

あらすじ

医者の花崗道円が、浮かない顔で念入りに手を拭き、莨に火をつける。「やはりそうですか」と問う宗城孝也に、道円はしばらく煙を見まもってから、重い口を開く。「間違いありません、お気の毒ですが、もう間違いはありません」——不治の病の宣告だった。だが孝也は、取り乱すことなく、静かに自らの死を受け入れる。物語は、限られた時間のなかで、孝也が身辺を整え、大切な人々への思いを託していくさまを、月の松山を背景に、しみじみと描いていく。物語の結び、孝也は友・泰二郎に、後事を託す。「あのひとを頼む」「熊の仔はおれが放した」——飼っていた熊の仔を山へ放ち、後を頼んで、孝也の呼吸は止まる。泰二郎は孝也の手を握ったまま、激しく泣きだす。靄はほとんど消えていた——。一人の男の潔い最期を、静かな余韻とともに描いた、山本の一編である。

登場人物

冒頭部(原文より)

 宗城孝也は足袋をはきながら、促すように医者のほうを見た。花崗道円は浮かない顔つきで、ひどく念いりに手指を拭き、それから莨盆をひきよせて、いっぷくつけた。 「やはりそうですか」と孝也が訊いた。  道円は聞えなかったように、じっと、煙管からたち昇る煙を見まもっていた。 「間違いありません」と道円は云った、「お気の毒ですが、もう間違いはありません」

「月の松山」山本周五郎(青空文庫)

末尾部(原文より)

「あのひとを頼む」と孝也は云った、「――熊の仔はおれが放した」  泰二郎は孝也の手を握った。孝也の呼吸は止った。泰二郎は孝也の手を握ったまま激しく泣きだした。靄は殆んど消えていた。

「月の松山」山本周五郎(青空文庫)

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

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