初夜(山本周五郎)のあらすじ・登場人物
討入りの夜、そして祝言の夜
- 歴史
- 心理
- 文字数
- 17,311字
- 読了目安
- 約35分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
この作品について
山本周五郎が1954年(昭和29年)、「週刊朝日」春季増刊号に発表した時代小説。仇を討って血に染まった友・除村久良馬が、祝言をひかえた脇屋代二郎のもとを訪れる。討入りの夜と祝言の夜が交錯する、緊迫した武士の情義を描いた一編である。
あらすじ
明和九年二月中旬のある日、脇屋代二郎の屋敷へ、除村久良馬が訪ねてくる。練志館の師範を兼ねる久良馬の、着物の片袖から袴にかけては、どす黒く血に染まっていた。「小森蔵を斬って来た」——川端の網屋で会食していた三人に踏み込み、宿敵・小森蔵を討ちとめたのだ。落合と井関は逃がしてしまったという。仇討ちを果たして血にまみれた久良馬と、その友・代二郎。物語は、この緊迫した一夜のなかで、二人の武士の情義と、それぞれの覚悟を描いていく。じつは、その夜は代二郎の祝言の夜でもあった。「こちらは名残りの夜で、われわれは……というわけだ」——討入りを終えた久良馬と、これから新たな生をはじめる代二郎。ひとつの夜に、別れと門出とが交錯する。武士の情義と、対照的な二人の「初夜」を、緊迫感をもって描いた、山本の一編である。
登場人物
- 脇屋代二郎 祝言をひかえた武士
- 除村久良馬 仇を討った練志館の師範
冒頭部(原文より)
明和九年二月中旬の或る日、――殿町にある脇屋代二郎の屋敷へ、除村久良馬が訪ねて来た。……玄関に立っている久良馬の姿を見て、代二郎はちょっと息をのんだ。久良馬の着物の片袖から袴の一部へかけて、どす黒く血に染まっていたからである。 「小森蔵を斬って来た」久良馬は云った、「――川端の網屋で三人が会食しているのをつきとめ、踏み込んでいって斬った」
「初夜」山本周五郎(青空文庫)
末尾部(原文より)
「姿だけは妻らしいがね」と代二郎が微笑しながら云った、「――実を云うと祝言は今夜なんだ」 久良馬はけげんそうな眼をし、そして口ごもった。 「するとつまり、二人は今夜が」 「そうなんだ」と代二郎が云った、「――こちらは名残りの夜で、われわれは……というわけだ、ではこれで帰るよ」
「初夜」山本周五郎(青空文庫)
原文を読む
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