四日のあやめ(山本周五郎)のあらすじ・登場人物
大事の朝に試される夫婦の情
- 歴史
- 心理
- 文字数
- 19,207字
- 読了目安
- 約38分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
この作品について
山本周五郎が1954年(昭和29年)、「オール讀物」に発表した時代小説。寒い早朝、「大事が起こった」という急な来客が、五大家に思わぬ波紋を投げかける。夫・主税介と妻・千世の、危機を経て深まる夫婦の情愛を、しっとりと描いた一編である。
あらすじ
二月下旬の、狂ったように冷えこんだ寒い朝。千世が鏡に向かっていると、家士が「来客です」と告げる。まだ客の来る時刻ではない。「深松さまです、大事が起こったからすぐお目にかかりたい、と」——「大事」という言葉が千世の耳に刺さる。良人の五大主税介はまだ寝ていた。「わたくしがまいります」と、千世は玄関へ向かう。この早朝の急な来客が持ち込んだ「大事」をめぐって、物語は、夫・主税介と妻・千世の関係に思わぬ波紋を投げかけていく。危機や誤解を経て、二人の夫婦の情愛は、かえって深まっていく。物語の結び、千世は良人の寝間で、その裸の腕に絡まりながら、うっとりとした声で囁く。「わたしあちらのほうが好き、あなたの匂いのするお寝間のほうが、ねええ」。主税介は妻を抱えて自分の寝間へ戻り、あいだの襖を閉めるのだった。危機を経て深まる夫婦の情愛を、しっとりと描いた、山本の一編である。
登場人物
- 千世 五大主税介の妻
- 五大主税介 千世の良人
- 深松伴六 早朝に訪れる来客
冒頭部(原文より)
二月下旬の寒い朝であった。……早朝五時ちょっと過ぎたじぶん、千世が居間で鏡に向っていると、家士の岩間勇作が来て「来客です」と告げた。 「深松さまです、裏殿町の深松伴六さまです」と勇作は云った、「たいそうおいそぎのようすで、大事が起こったからすぐおめにかかりたい、玄関で、と申しておられます」
「四日のあやめ」山本周五郎(青空文庫)
末尾部(原文より)
「いいえあちらで」千世は両手で抱きついた。……彼女はその裸の腕で良人に絡まりながら、うっとりとした声で囁いた、「わたしあちらのほうが好き、あなたの匂いのするお寝間のほうが、ねええ」 「こうか」と主税介が云った。 「ああ」と千世が云った、「あなた」 主税介は妻を抱えて自分の寝間へ戻り、あいだの襖を閉めた。
「四日のあやめ」山本周五郎(青空文庫)
原文を読む
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