みずぐるま(山本周五郎)のあらすじ・登場人物
薙刀の少女芸人と若侍の恋
- 歴史
- 心理
- 文字数
- 27,088字
- 読了目安
- 約54分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 愛知県
この作品について
山本周五郎が1954年(昭和29年)、「面白倶楽部」に発表した時代小説。三河・岡崎の掛け小屋で、薙刀の妙技「みずぐるま落花返し」を見せる少女芸人・若尾。老職の家を継いだ若侍・弘田和次郎との、身分を越えた恋を、雨のなかにみずみずしく描いた一編である。
あらすじ
明和五年の春、三河・岡崎城下の光円寺の境内で、「岩本新之丞一座」の掛け小屋興行があった。弘田和次郎は、従兄の谷口修理に誘われて見物にいく。弘田家は六百五十石の老職だが、二年前に姉が自殺したことが祟って父は隠居し、和次郎は十八歳で家督を継いだものの、まだ無役の身だった。舞踊や曲芸に退屈した和次郎を、修理が「美若太夫というのを見せたい」と引き止める。まもなく始まった美若太夫の「みずぐるま落花返し」——太夫は十五、六の少女だった。しもぶくれのあどけない顔立ちに、乳の匂いがするような大きな眼。武者袴に襷、鉢巻をして稽古薙刀を持ち、三人の男が続けざまに投げる紅白の毬を、薙刀で一つも誤たず打ち返す、水際立った技だった。この少女芸人・若尾との出会いから、和次郎の身分を越えた恋が始まる。物語の結び、二人は並んで、雨の中を住居のほうへと去っていく。「若尾はどうかすると、姫君にまでそれを教えかねないからな」とからかう和次郎に、若尾は「まさかと思いますわ」とつんとして薙刀を肩へかつぐ。和次郎は振り向いて静かに笑うのだった。旅芸人の少女と若侍の恋を、雨のなかにみずみずしく描いた、山本の一編である。
登場人物
- 弘田和次郎 老職の家を継いだ若侍
- 若尾(美若太夫) 薙刀の妙技を見せる少女芸人
- 谷口修理 和次郎の従兄
冒頭部(原文より)
明和五年の春二月。――三河のくに岡崎城下の西のはずれにある光円寺の境内で、「岩本新之丞一座」というのが掛け小屋の興行をした。弘田和次郎は友人の谷口修理にさそわれて、或る日それを見物にいった。
「みずぐるま」山本周五郎(青空文庫)
末尾部(原文より)
「まあそんな、いくらわたくしだって、そんな、――まさかと思いますわ」 若尾はつんとして薙刀を肩へかついだ。和次郎は振向いて見ながら静かに笑った。二人は並んで、雨の中を住居のほうへ去っていった。
「みずぐるま」山本周五郎(青空文庫)
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