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明治開化 安吾捕物 その四 ああ無情(坂口安吾)のあらすじ・登場人物

行李の中の死体と化ける犯人

  • ミステリ
  • 歴史

坂口安吾 1951年(昭和26年)1月 「小説新潮」

文字数
23,336字
読了目安
約47分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

坂口安吾の連作探偵小説「明治開化 安吾捕物」の第四話で、1951年(昭和26年)1月の「小説新潮」に掲載された。上野広小路で客を待っていた朦朧車夫が、ある青年紳士に頼まれて大きな行李を運ぶ。祝儀のよさに中身を盗もうと開けてみると、入っていたのは若い女の他殺死体だった。貿易商の妾、医学生の道楽者、女剣劇の花形、狂言作者――浅草六区の芝居小屋を舞台に入り組んだ男女の縁をたどり、新十郎は「芸術的」とまで評する周到な犯罪に挑む。明治の芸人たちの渡米巡業の記録が、思わぬ過去を照らし出す。

あらすじ

十一月の晦日の夜、朦朧車夫の捨吉は青年紳士に頼まれて、本郷真砂町の中橋別荘から行李を浜町の本邸へ届けることになった。中身を横取りしようと自宅で開けると、両眼に釘を打たれた女の絞殺死体が現れる。同じ夕方、別の車夫音次は女の客に香水のハンカチを嗅がされて気を失い、車と服を奪われていた。死体は貿易商中橋英太郎の妾ヒサとわかる。ヒサは医学生荒巻敏司と忍び逢いを続けており、荒巻は女剣劇の花形梅沢夢之助とも深い仲で、夢之助自身も中橋の囲い者であった。女中ヤスの偽りの証言が崩れ、ヒサはその日、浅草六区の飛龍座を訪れて狂言作者小山田新作に抱きつかれ、夢之助の楽屋で休んだまま姿を消したことが判明する。さらに中橋本人も、晦日の夜にヒサの妾宅で怒って飛び出したきり行方が知れない。新十郎は芸人の渡米巡業の記録から、中橋が元は軽業師で、夢之助の母やヤスの母を捨てた過去を知る。そして飛龍座の隣の空き小屋に、行李を引きずった跡を見つける。やがて中橋がクロロホルムを嗅がされて絞殺された死体で隅田川に上がる。勝海舟は女剣劇の夢之助を下手人と見立てるが、新十郎は、わざと行李を中橋家へ届けさせたのは殺された日時と場所を知らせ、役者の犯行に見せるためだと見抜く。ヒサと中橋の二人を同じ日に殺せたのは、ヒサを飛龍座へ導き、その夜中橋が妾宅に来ることを知っていたヤスだけであった。母を捨てて失明させた中橋への恨みを晴らすため、愚かなふりをして周到に計画した犯行だったのである。

登場人物

冒頭部(原文より)

 今日一日で月が変ると、明日からは十二月。一年に十二回ある晦日という奴も気に入らないが、十二月という最後の月は月全体が性にあわない。昨日今日からメッキリ寒気が身にしみやがると、モーロー車夫の捨吉は毛布をひっかぶって上野広小路にちかい小路の角で辻待ちをしていた。上野駅には車夫集会所というのがあって、駅の車夫はそこに詰めるのが普通であるが、捨吉はモーローだから、辻で客を拾う。客によっては酒手をたんまり強奪しようという雲助稼業である。

「明治開化 安吾捕物 その四 ああ無情」坂口安吾(青空文庫)

末尾部(原文より)

 虎之介は己れのフシ穴の眼によって非凡なる英傑の目を狂わしめたことを甚しく愧じ嘆き、長く長くうちうなだれて、一言の言うべき言葉も失っているのみであった。

「明治開化 安吾捕物 その四 ああ無情」坂口安吾(青空文庫)

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